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日本軍人であることが「楽しかった」と率直に語る元シベリア抑留兵の韓国人男性パクさんが戦後も断続的に投函し続け、そのたびに宛先不明となってきた手紙の言葉たちがいま、一人の日本人女性ドキュメンタリストの媒介によって、然るべき場所へ着地しようとしている。宛先不明の主である元日本兵・山根さんはどこへ行ってしまったのだろう。戦争の記憶を呼び覚ますドキュメントでありながら、探偵映画のような面白味もほのかに漂わせつつ進んでいく。異色の日韓戦友秘史である。
10歳少女への性的虐待、継父の家庭内暴力、死体を食肉のように処理する遺棄シーンなど、エログロ描写は確信犯的である。近年は自閉青年と愛犬の喜劇「マメシバ」シリーズを中心に活動してきた亀井亨監督が本作を世に問うたのは、自分の力はこんなものではないという捨て身の呪詛と共にではないか。万人には薦められない。子役女優を巻きこんだ露悪的な製作姿勢は、一度きちんと批判に遭わなければなるまい。しかし私自身は、如何ともし難く魅了されたことをここに白状する。
アフガニスタン駐留デンマーク軍が、ある日タリバンの猛攻を受け、たまらず空爆を要請した。民間人の犠牲者が出たこの空爆をめぐり、部隊長は軍事法廷にかけられる。空爆した第6地区は本当にタリバンの攻撃拠点だったのか? 映画は、裁かれる部隊長の心象を中心に写し出す。戦場と法廷、爆撃音と言葉、アフガンの荒野とコペンハーゲンの夜景。対照的な時空間でありながら、容赦なく主人公を追いつめるという点で共通する。正解のない難問に鋭く切り込んだ手厳しい意欲作だ。
ロシアマフィアのマネーロンダリングをテーマに世界各地でロケしたスパイアクションだが、この映画は主人公夫婦の倦怠と不和が前提となっている点が興味深い。大スケールの亡命劇と一夫婦の問題が(等価とまでは言わないが)二重のサスペンスを織りなす、そのサイズの大小を無化する対称性こそ、映画というものの魅力ではないか。「ラッシュ」「白鯨との闘い」などロン・ハワード監督の近作で撮影を担当したアンソニー・ドッド・マントルが再び切れ味鋭いカメラワークを見せる。
韓国のお爺ちゃんと広島のお婆ちゃん、その人柄のよさが引き出され。それよりも監督の優しさが滲み出て。だけど、日本兵として戦った韓国人がいてシベリア抑留の話があり、一方、戦友の日本人は帰国後、共産党員として活動――となると、これでは物足りない。取材相手と仲良くなりましたでは単なる日記なんで。この監督、欲がないというか、好奇心が不足の気がして。自分が知りたい、聞きたいことがあればもっと喰らいつくはず。対象の眼のつけどころとか、取材力はあるのに。勿体ない。
いじめられっ娘がいて、母親は宗教狂い、義父はDV、心とからだに傷が絶えない。もう息の詰まるお話で、おまけに連続殺人魔のスプラッタ描写も挿入される。この種の趣向が好きな人にはたまらない作品だろう。脚本=演出もがっちりとその嗜好を満たしている。けど、こういう世界が苦手な者にも伝わる、風穴みたいなものがほしくて。最後の少女の絶叫であの男がちらり動揺、その微妙な表情の変化を見せるだけでも。これではあまりにも型にハマリすぎ。なんか映画が閉ざされてる気がする。
アフガニスタンに駐屯するデンマーク軍中隊の話。戦場と家庭描写がカットバックされ、兵士ひとり、その命の重さが描かれる。それはまた戦闘場面の緊張感をも昂めて。後半は裁判劇となり、主人公の部隊長がはたして家庭に戻れるか、そのハラハラで引っ張り、さらにその先の結末で、はじめて戦争の意味、その罪が問われる――と、よく考え抜かれた脚本と演出。逆に、そこに計算くささが少し匂うが、好篇佳作であることは間違いなく。昨今のアメリカの戦争映画に較べれば納得の一作。
ル・カレ映画に駄作なし。おまけに今回は原作者が製作も兼ねてというので期待したが。小説の方は現況のスパイ活動を反映してあまり意気があがらず、中程度の面白さ。それを脚本は、活劇的趣向を盛り込んだりして映画的にまとめ、結末など上手く納めている。が、巻き込まれ型サスペンスに徹すればもっとスッキリしたんじゃないかとも。演出に味がなく、雰囲気描写が弱いのが残念。お話のキー・パーソンとなるスカルスガルドが相変わらずの好演。マクレガー君に元気がないのが気になる。
シベリア抑留の経験を祖父に持つ新進監督・久保田桂子が、孫の世代から戦争を見つめたドキュメンタリー。日韓のシベリア抑留者の体験談を聞く取材の中で出会った朴さん。彼はシベリアで時間を共にした友・山根さんの記憶を大切にしていた。監督は山根さんを探し、やがてすでに亡くなっていた彼の妻に会う。戦友と妻の愛情溢れる証言、またそれぞれの行間から、ひとりの日本人の人生、ひいては戦争の時代と痕跡が見えてくる。優しいタッチだが、掘り下げているものの奥行は深い。
亀井亨が自主製作映画として、平山夢明の短篇小説を映像化。どう評価していいか難しい。10歳の少女の日常化した家庭内の虐待を描いていて、興味本位でないことはわかるのだが、それをあえていまの時代に実写にするのは、誰に、何のためなのか。はっきりすべき。ここで演じている少女は、陰りがあるが存在感と気迫が強く、作り手の意図としてもむしろロリータ臭を拒絶しているのはいいと思う。確かに野心作なのかもしれないけれど、子どもへの虐待シーンを長々と観ていたくない。
本作の監督T・リンホルムは、冷徹な観察眼で人間や世界を見ている。彼が精緻な描写力で映し出すのは身も蓋もない現実だ。戦争映画だが、後半、アフガニスタンの戦地で軍規違反をした主人公がデンマークに帰国し、これに関する裁判が始まると、別の意味で妙な気持ちになってきた。ここに女検事が登場する。その描かれ方。ホモソーシャルな軍隊精神が、フェミニスト風の彼女を封じ込める。これが社会の現実だと受け止めろということか? 定石を乱す社会的生き物としての女への不寛容に胸騒ぎ。
ジョン・ル・カレのスパイ小説を映画化したエンタテインメント。ごく普通のイギリス人大学教授と弁護士の妻。倦怠期夫婦が外国旅行先で危険な亡命劇に巻き込まれる。巻き込まれキャラとして申し分ないユアン・マクレガーが、期待通りに人のよさにつけこまれて翻弄される。そんなユアンと優秀な妻ナオミ・ハリスのバランスがよく、安定した出来栄えなのだけど、家族というテーマ性が強すぎて、スパイ映画としてはややぬるいような。それも現代的なのだととれば、ある意味、斬新。