初秋の信州、寅は中込キクエという老婆の家で一晩世話になった。翌朝、原田真知子という美しい女医が迎えにきた。老婆は体が悪く、寅の説得もあって入院することになった。寅は真知子の家で彼女の姪・由紀と共に夕食をご馳走になった。由紀は早稲田の学生で短歌を趣味にしていた。寅は真知子に一目惚れ、真知子も寅に好意をもったが、夕食が終わると帰って行った。東京に戻った寅は真知子を忘れられずに早大へ由紀を訪ねた。教室に紛れ込んだ寅は由紀と再会するが、たまたま真知子も東京に遊びに来ているという。数日後、真知子は由紀を連れて「とらや」を訪ねてきた。さくらやおばちゃんが暖かく迎えてくれ、寅も真知子も楽しい一日を過ごした。しばらくして由紀から連絡が入った。信州のお婆ちゃんが危篤だという。寅はすぐ車で信州に向かった。残念ながら寅は臨終には間に合わなかった。病院をやめたいという真知子を励まし、寅は由紀にそっと別れを告げたのだった。