東京都目黒区の生まれ。本名・尾美利徳。幼稚園の時に劇団ひまわりに入団。エキストラなどを経て、1978年、手塚治虫原作、市川崑監督の「火の鳥」のオーディションに合格、物語の中心となる少年・ナギ役で本格デビューする。子役離れした演技が注目され、続いてNHKのドラマ『ぼくは12歳』79に主演。相米慎二監督「翔んだカップル」80では、撮影当時14歳で高校生役に扮し、優等生の屈折と孤独を表現する。82年、大林宣彦監督の「転校生」で映画初主演。中学生男女の中身が入れ替わってしまう難役を爽やかに演じ切り、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。同じ尾道が舞台の「時をかける少女」83、「さびしんぼう」85にも出演し、“尾道三部作”の顔に。「僕の映画の署名代わり」とも言わしめ、大林の作品には90年代半ばまで、カメオ出演も含めてそのほとんどに起用される。中原俊監督「メイク・アップ」87、藤田敏八監督「リボルバー」88などの好演で少年性からも脱皮。89年スタートのフジテレビ『鬼平犯科帳』では、人の好い同心・木村忠吾役でレギュラー出演し、広い人気を得る。以降も清水浩監督「生きない」99、山田洋次監督「たそがれ清兵衛」02や、テレビの2時間サスペンス、OVに舞台と幅広く活動。宮藤官九郎脚本のTBS『マンハッタンラブストーリー』03、『タイガー&ドラゴン』05のハイテンションな怪演では新たな一面も開拓した。周防正行監督「それでもボクはやってない」07、中村義洋監督「ジェネラル・ルージュの凱旋」09などの喰えない人物の役で温厚なイメージを逆手にとる一方、NHK連続テレビ小説『てっぱん』10では尾道の住職に扮し、“尾道三部作”のその後を思わせるなど、豊富な引き出しで演技者の味わいを増している。