関東の東竜会幹部、加納秀次は、会長の坂田良吉を裏切り、関西の暴力団に寝返った松岡を殺害した。殺された松岡には三歳になる洋子という一人娘があり、加納は洋子を舎弟の南幸吉に託して、旭川刑務所に服役した。服役中、加納はブラジルにいる伯父といつわり、洋子と文通を続ける。十五年の刑期を終え、出所した加納は、洋子に加納の手紙を運ぶうち彼女の恋人となった竹田の案内で、洋子の姿を見ることができた。ある日、洋子の手紙によく書かれていた喫茶店で、加納は彼女と出会う。加納がブラジルにいる伯父ではないかと思った洋子は、彼にそれを尋ねようとするが、加納はすばやく彼女の前から去り、店を出て行った。組結成の話も断わり、堅気になろうと決心していた加納は、坂田から、息子の道郎の相談相手になってくれと頼まれる。加納と道郎が再会を喜び合ったのも束の間、坂田は関西の暴力団員に殺される。その仇を討つため、関西連合の三枝と東竜会を裏切った山辺を、道郎が狙っていることを耳にした加納は、坂田から道郎を頼まれたこともあって、苦悩する。山辺殺害を決意した加納は、洋子へ電話をかけ、当分日本には帰れないというのだった。翌日、南に道郎が外に出られないように見張らせた加納は、山辺のもとへ向かう。それは、再び会うことができないであろう洋子の幸福を願いつつ、十五年前の状況に戻ってしまう加納の宿命であった。