昭和二十八年の春。佐賀県にある鶴ノ鼻炭鉱では、ストライキが行われていた。そのさなかに、安本一家の大黒柱である炭鉱夫の父親が死んだ。残された喜一、良子、高一、末子の四人の子供たち。喜一は二十歳になったばかりだ。安本一家が住んでいる山の中腹の長屋の人たちも、皆その日暮しの苦しい生活をしていた。長屋の子供たちは学校へ弁当も満足には持っていけない。喜一が失業した。一家共倒れを防ぐため、高一と末子を辺見家にあずけ、喜一は良子と長崎に働きに出かけた。しかし、辺見家でも生活は苦しく末子は栄養失調になった。赤痢が発生した。末子も罹病した。保健婦のかな子と、末子の担任教師桐野が働いた。やがて、決定的な時が来た。会社が炭鉱を廃坑すると宣言したのである。人々はやむなく家をたたみ、山を下りていった。高一と末子も、帰って来た喜一に連れられて、閔さんの家に引きとられた。しかし、汚ない堀立小屋で異臭がひどく、夜逃げして炭鉱に戻った。--桐野はかな子をハイキングに誘った。が、かな子の答えは冷たかった。許婚者がいたのだ。高一も働きに出かけた。漁港の荷運びだ。喜一は佐賀のパチンコ屋に就職した。かな子は東京に転勤になった許婚者を追って鉱山から去った。高一は東京へ行った。しかし、東京へ着くとすぐ警察に保護された。中学生が、それも一人で九州から職を探しに来たという話に、不審に思った自転車屋の主人が警察に連絡したのである。送り返されて高一は炭鉱村に帰った。嬉し泣く末子の肩を抱きながら、やはり兄妹一緒に生きていこうと思った。