1988年夏、サラリーマンの山下拓郎は妻の浮気を告発する差出人不明の手紙を受け取った。不倫の現場を目の当たりにした彼は、激しい怒りに駆られて妻を刺殺してしまう。それから8年、刑務所を仮出所した山下は、千葉県佐倉市の住職・中島の世話で、利根川の河辺に小さな理髪店を開業した。人間不信に陥っていた彼は、仮釈放中にトラブルを起こしてはならないこともあって近所づきあいもせず、飼っているうなぎを唯一の話し相手に、静かな自戒の日々を送っている。ところがある日、うなぎの餌を採りに行った河原で、山下は多量の睡眠薬を飲んで倒れている女性を発見した。服部桂子というその女性は、山下によって命を救われるが、山下は「東京に帰りたくない」と言う彼女を店で使うよう、中島の妻・美佐子に押し切られてしまう。金融会社の共同経営者で愛人でもある堂島との関係や、精神病の母・フミエとの血のつながりから逃がれたいと思って自殺を図った桂子と関わりを持つことは、彼にとって迷惑でしかなかった。しかし、明るい彼女のお陰で店は繁盛するようになり、また山下の気持ちも次第に解きほぐされていく。だが、そんな山下の前に刑務所で知り合った男・高崎が現れた。出所し、ゴミ回収の仕事に就いていた高崎は、桂子と幸せそうに働いている山下をやっかみ、桂子に山下の前歴をバラしたり、怪文書を店先に張ったり、山下のSEX経験をバカにしたりと執拗な嫌がらせをしてくる。一方その頃、堂島の子を身ごもっていることが判明した桂子が、山下の前から姿を消した。過去を清算するために上京した彼女は、母を秋田の病院に帰し、堂島の会社から預金通帳を取り戻すと再び山下の元へ戻ってくる。しかし、堂島はそれを許さなかった。山下の店へ先回りした彼は、帰ってきた桂子から金を奪い返し、彼女を連れ戻そうとする。ところが、それまで桂子の愛を頑なに拒絶し続けていた山下が、あえてトラブルに巻き込まれると承知しながら、堂島から桂子を守った。山下は堂島とのトラブルで刑務所に戻されることになったが、様々な人たちとの交流を通して人間性を取り戻し、桂子とお腹の子を受け入れて、これからの人生を生きていくことを決心する。