「港のマリイ」のマルセル・カルネが、「悪魔が夜来る」に引つづき3年3ケ月の歳月を要して完成した1944年度作品で前後篇3時間半に及ぶ長大作。「北ホテル」を除いて当時までのカルネ全作品に協力して来たジャック・プレヴェールがオリジナル・シナリオを担当、台詞を執筆している。撮影は「しのび泣き」のロジェ・ユベールと「みどりの学園」のマルク・フォサール、音楽は「港のマリイ」のジョゼフ・コスマと「めぐりあい」のモーリス・ティリエで、パントマイム場面の音楽はジョルジュ・ムウクの担当。音楽監督はコンセルヴァトワールのシャルル・ミュンク(現在ボストン交響楽団の常任指揮者)である。美術はアレクサンドル・トローネ、装置はリュシアン・バルザックとレイモン・ガビュッティが受け持っている。出演者は「しのび泣き」のジャン・ルイ・バロー、「悪魔が夜来る」のアルレッティ、「火の接吻」のピエール・ブラッスール、「オルフェ」のマリア・カザレスを中心に、「バラ色の人生」のルイ・サルー、「悪魔が夜来る」のマルセル・エラン、「パリの醜聞」のピエール・ルノワール、以下ガストン・モド、ジャーヌ・マルカンらが大挙出演する。1840年代、ルイ・フィリップ統治下のパリ繁華街を舞台に、とりどりの人間群が織りなす人生の色模様をバルザック的な壮麗さで描いたカルネ、プレヴェールの代表作。劇の中心をなすバチスト・ドビュローとフレデリック・ルメートルは共に実在の人物で、前者は本名シャルル、パントマイムのピエロ役の近代的創造者として知られている。