若尾久夫は海運会社の一サラリーマンだが、支店長から娘を嫁にと言われた時、将来を約束する最後の機会と思った。しかし彼には同じ会社に勤める清水雅子という心に決めた女性があった。翌日、久夫は雅子に自分の気持を打明けたが、彼女も同じ気持と知り支店長の話はキッパリ断った。だが以後、雅子が会社に現われないのが気がかり。彼女の父は昔気質で、姉千津子が家出の上、音楽家丸山俊夫と結婚してから雅子に大きな望みをかけていた。雅子は姉夫婦と相談の上、久夫の下宿を訪れ、二人の力で幸福を築こうと誓い合う。だが支店長の一物ある口ぶりから雅子の両親は結婚に反対、娘を監禁するが、雅子は遂に家を飛び出して久夫の許に走る。姉夫婦と仲人を勤める下宿の大越夫婦だけの列席で二人は結婚式を挙げる。新婚旅行に出る二人の車をかげながら見送る雅子の父母や名古屋から上京して来た久夫の母の心中も、つまる処は二人の幸福を祈るのみ。会社では支店長の娘を貰った中島が課長に昇格、小杉前課長送別の日、中島と小杉の喧嘩を仲裁に入った久夫は、中島の不遜な態度に鉄拳を飛ばし、雅子に内証で会社を辞め職探しに歩く次第となった。かつての同僚愛子から事情を聞いた雅子は、苦労を分けあうため就職を決意。それが決った日、二人は割切れぬ気持から大喧嘩をし、雅子は姉夫婦の許に駈け込んだ。しかし互いの愛情さえ強ければどんな困難も乗り越えられるとさとされ、雅子は再び夫の許へ。一人淋しく食膳に向う久夫の胸に顔を埋める雅子。二人の胸には、あせらず一歩一歩幸福を築き上げようという固い決意が芽生えていた。