音楽学校の生徒国分英次は、銀座の流しギターで評判の暴れん坊である優しい兄の正一を売り出そうと思っていた。それをジャズ・バンド「福島慎介とシックスジョーカーズ」の女支配人美弥子にたのみ込んだ。バンドのNO1ドラマー、チャーリー・桜田は、美弥子と結ばれた仲だったが、最近ステージ・ダンサーのメリーに引かれていた。そして、ついに美弥子と別れてメリーの属する持永興行と契約してしまった。NO1を失った美弥子は正一のことを思い出した。「彼を日本一のドラマーとして育て上げよう」桜田への競争心も手つだって彼と契約したのである。正一も懸命になった。父を失い、母から冷たくあつかわれて来た彼は、「おふくろの鼻をあかしてやる」という気持もあった。正一が初出演する日、表面、ジャズ評論家で、実は情報屋の黒幕左京徹が現れ、美弥子との仲をとりもつことを条件に、君を売り出してやろうと正一に持ち出した。正一の人気は次第に上ってきた。もちろん左京の運動もあったが、彼の猛練習、それに美弥子の厳格な指導でメキメキと力をつけたのだった。そのうち、二人の間に淡い恋心が芽生えた。いよいよ桜田と正一がドラム合戦をすることになった。その前夜、正一はメリーをめぐる紛争から、桜田の取巻きの与太者と喧嘩して右手を傷つけられた。当日、繃帯をまいた手の痛々しい彼は、遂にマイクをにぎると荒々しい一曲を唄い、満場の拍手をあびた。だが、母は正一に冷たかった。絶望して泥酔した彼は、はじめて美弥子と結ばれた。ところが、たまたま弟英次が新人リサイタルに推薦されることになり、それには左京の力が必要となった。正一は以前の左京との約束を守ろうと、美弥子から離れるつもりになったが、左京と桜田一味の襲撃にあい、右手を完全につぶされてしまった。英次の晴れての演奏会の夜がやってきた。客席では今は正一を理解した母、美弥子、そして英次を恋するみどりが、喜びにあふれてかがやかしい英次の姿にながめいっていた。その時正一は、バーのラジオで英次のうたごえをききながら、一人で涙を流していた。自分はダメだが、弟が……と思いながら。