創立100周年を迎えた東西新聞社は、記念事業として世界の食文化から最高の料理をよりすぐる“究極のメニュー”なる企画を掲げ、その監修役に希代の美食家で、自ら“美食倶楽部”を主宰する陶芸家の海原雄山を迎えようとしていた。企画の担当者には、文化部の山岡士郎と栗田ゆう子が選ばれるが、雄山は士郎が担当だと知った途端に監修役を降りてしまう。大原社主とともに雄山の屋敷を訪れたゆう子は、そこで雄山と士郎が実は親子であることを聞かされる。ふたりの間には、母・はつえが危篤にもかかわらず窯の前を離れなかった雄山の態度に反発した士郎が家を飛び出して以来、13年にも及ぶ確執があったのだ。雄山の説得に失敗した大原は、代わりの監修役として著名な料理評論家に話を持ちかけるが、彼らがさほどの舌を持ち合わせていないことを見破った士郎に白羽の矢を立てる。そのころ、ライバル社である帝都新聞は、文化事業として雄山監修の“至高のメニュー”なる企画を進めており、その情報を得た週刊タイムが、誌上で“究極対至高の対決”を企画した。どうしても負けられない意地もあって、士郎たちは対決を受け入れるのだった。究極対至高の一回戦は魚対決で、銀座のホームレス・辰っつぁんなどからアドバイスを受けた士郎は鯛で勝負するが、雄山の日本人の心を動かす平凡な鯵のひらきの前に敗れる。二回戦の中華対決では雄山の仏跳墻に対し、士郎は乞食鶏で挑んだが、またしても軍配は雄山に上がった。そんなおり、士郎を兄のように慕う元美食倶楽部支配人の娘で、現在は雄山の屋敷で暮らしている里美が、体の調子を崩して倒れてしまう。ゆう子の説得で雄山の家を訪れた士郎は、昔、はつえが作ってくれたのと同じ丹波の煮豆が食べたいと里美にせがまれた。里美のために煮豆を作ってやろうとする士郎に、雄山は勝負を挑む。父子の意地を賭けた煮豆対決は翌朝にまで及んだが、里美の選んだのは士郎の煮豆だった。器作りから始まる究極対至高の第三回戦を前に、今度こそ負けられない士郎は、窯に向かう雄山の姿を見ながら、根っからの芸術家である雄山という男を少し理解したような気がしていた。