1993年7月。出版社に勤務する翔子(木村多江)は、靴の修理屋で働くカナオ(リリー・フランキー)の子供を身籠っていた。二人は、式を挙げぬまま結婚していた。翔子の父は愛人を作って母の波子(倍賞美津子)を捨て、名古屋で暮らしているらしい。兄の勝利(寺島進)はやり手の不動産屋で、妻の雅子(安藤玉恵)と二人の子供と暮らしている。クセのある親族たちだが、カナオはうまくつきあっていた。やがてあるきっかけからカナオは、法廷画家の仕事を始める。記者の安田(柄本明)や先輩画家の吉住(寺田農)たちに揉まれながらも、自分なりの生き方を模索するカナオだった。1994年2月。カナオと翔子が暮らす部屋には、子供の位牌が置かれていた。その悲しみから、少しずつ精神を病んでいく翔子。翌年、新たな子供を身籠る翔子だが、自分だけの決断で中絶手術を受ける。彼女の心の闇は、ますます広がっていった。カナオが法廷で対面する事件が凶悪化していくのとも似ているかのように…。1997年10月。仕事も辞めて心療内科に通う翔子は、台風の日にカナオに中絶したことを告白する。「どうして、あたしと一緒にいるの?」「好きだから…」二人は、夫婦であることの絆を新たに確認しあうのだった。その翌年、お寺に通うようになった翔子は、精神の安定を取り戻す。僧侶からは天井画を依頼されて、ひさしぶりに絵筆をとる翔子。彼女もまた、かつては絵画の道を志していたのだ。ある日、父が末期ガンに犯されていると聞いた兄の勝利から、様子を見てくるように頼まれて、カナオと二人で名古屋に向かう。その報告の家族会議の場で、実は父を裏切ったのは母の波子の方だったと聞かされる。カナオが描いた似顔絵で、夫との対面を果たす波子。2001年7月。翔子の描いたお寺の天井画が完成した。そして、二人の部屋には、金屏風の前に並ぶカナオと翔子の写真が飾られていた。