男性      女性

※各情報を公開しているユーザーの方のみ検索可能です。

NEWS

KINENOTE公式Twitter

岸惠子

  • Keiko Kishi
  • 出演
本名
出身地 横浜市中区の生まれ
生年月日 1932/08/11
没年月日

関連作を買う

関連作を買う

略歴

神奈川県横浜市の生まれ。度々の転居で小学校をいくつか替わったのち、1945年4月、県立横浜第一高等女学校へ入学。やがて映画女優を志すようになり、2年生の時の49年に、同級生・田中敦子の伯父が松竹大船撮影所長・高村潔の友人だったことから、その紹介を受けて大船撮影所へ見学に行って、同年10月、吉村公三郎監督「真昼の円舞曲」のワンカットに出演する。翌50年、田中敦子とともに大船撮影所のニューフェイスとして合格。51年3月、正式に入社し、中村登監督「我が家は楽し」でデビュー、松竹お気に入りの清純派として合格点をもらう。親友の田中敦子も同時に入社するが、岸が本名をそのまま芸名にしたのに対し、田中は小園蓉子を芸名にし、このふたりに美山悦子・日夏紀子を加え“ラッキー・クローヴァー”として売り出す。切れ長のエキゾティックな眼と鼻筋の通ったチャーミングな美しい顔に加えて、独特のハスキーな声、それにカメラにも監督にも物おじしない素直さに未来の大器を感じた松竹は、まだ1作しか出演していない岸を、大曽根辰夫監督「獣の宿」に、松竹のホープとして売り出し中の鶴田浩二の相手役に抜擢。このサスペンス映画に殺人者で逃亡中の鶴田と恋に落ちる娘を熱演し、周囲の期待に応えた。次いで宮城千賀子主演「母恋草」51、水谷八重子主演「母待草」51などで娘役に起用され、早くも新人女優きってのホープとして評価される。時代劇にも出演し、「鞍馬の火祭」51に鞍馬天狗の嵐寛寿郎、「吃七一番手柄」51に高田浩吉、「江戸城罷り通る」52で市川右太衛門と共演、伊藤大輔監督にも起用され、「冶郎吉格子」52で長谷川一夫、「風流活殺剣」52では高橋貞二と共演するなど大物俳優たちとも堂々と遣り合う。52年5月、看板スター・鶴田浩二が松竹から独立して新生プロを創立。第1作としてマキノ正博監督「弥太郎笠」52の製作を発表、相手役に岸を指名する。松竹は拒否するが、かねてより松竹に不満のあった岸は辞表を提出し、京都ロケに参加。そこでマキノが松竹京都撮影所長・大谷博と話し合い、彼女の出演が認められた。結果、マキノが大満足する好演で、鶴田との仲もマスコミに騒がれることになる。鶴田の希望で新生プロの第2作「ハワイの夜」53でも共演、興行的にも大ヒットを記録し、岸のスターとしての商品価値を高めることとなった。53年3月に松竹に復帰、他社出演も認められることになり、新東宝の野村浩将監督「憲兵」53、大映の伊藤大輔監督「獅子の座」53などに出演。そして萩山輝男監督「景子と雪江」53では、松竹復帰後、初めての主演作を撮る。中村登監督「旅路」53では佐田啓二を相手に、暗い過去を背負いながらも明るく、近代女性らしい教養と理性を身につけ自立する女性を演じ、女らしさと潤いのある演技で見違えるような成長を見せた。松竹を飛び出した頃はアプレ娘と叩いたマスコミの論調も、女優のプライドを守り通した信念の女優として一転、にわかに株を上げることになった。そんな彼女を一気にトップ女優に押し上げたのが、52年4月から放送中だった菊田一夫・作のNHK連続ラジオドラマの映画化で、大庭秀雄監督のメロドラマ「君の名は」53である。「君の名は」は、太平洋戦争末期の東京大空襲の夜、数寄屋橋で若い男女が名乗り合う間もなく半年後に再会を約して別れるが、運命のまますれ違いを重ねるという悲恋物語である。相手役には佐田啓二が扮し、記録的な大ヒット。松竹は急きょ続編(53)、第3部(54)を製作し、岸が演じる真知子は国民的ヒロインとなる。ロケ地は観光名所化し、真知子巻なるストールやコケシが作られ、この年に生まれる子供たちに真知子、直樹の名が競って付けられるという社会現象を巻き起こしたのだった。この間にも、初の汚れ役に挑んだ小林正樹監督「壁あつき部屋」53(公開は56年)、中村登監督「家族会議」54、木下惠介監督「女の園」54などに出演。そして54年4月には、松竹と他社出演の自由もある条件付きの専属契約を結ぶが、同時にジャーナリストの若槻茂を代表取締役に、久我美子、有馬稲子とともに3人で“文芸プロダクション・にんじんくらぶ”を結成する。その後、松竹では彼女の個性を伸ばすような作品も役柄もなく、他社出演も目ぼしいものがなかった。わずかに念願の今井正監督「ここに泉あり」55、野村芳太郎監督「亡命記」55、中村登監督「修善寺物語」55に出演。その「亡命記」で東南アジア映画祭に出席したとき、イギリスのデヴィッド・リーン監督に目を付けられ、彼が監督する「風を知らない」の主演女優として白羽の矢を立てられる。出演する前から一躍、国際女優としてクロースアップされるが、結局、作品が製作延期となり出演を断念。その代わりに浮上したのがイヴ・シァンピ監督のフランス映画「忘れえぬ慕情」56だった。長崎に赴任したフランス人の造船技師(ジャン・マレエ)との悲恋を描いた作品で、日仏スターの派手な競演もあり成功作となった。この前後も有馬稲子と共演した「朱と緑」前後篇56や、小林正樹監督「あなた買います」56、豊田四郎監督「雪国」57のヒロイン・駒子など、佳作に連続出演する。この頃、イヴ・シァンピとのロマンスがマスコミに騒がれていたが、57年5月4日、パリで川端康成が立会人となって結婚式を挙げた。以降、パリを拠点に、毎年のように日本に帰国して女優活動を続けることになる。58年9月、最初の里帰りで、木下惠介監督「風花」59に出演。大地主の息子と心中をはかり、ひとり生き残って地主の家に引き取られ男児を出産するが、周りに迫害されながらも力強く生き抜いていく姿を、パリ帰りという違和感もなく味わい深く演じた。60年には市川崑演出の日本テレビ『足にさわった男』でテレビ初出演。そして大映の市川監督「おとうと」60に主演。幸田露伴の娘・幸田文の自伝的小説の映画化で、父(森雅之)は作家、身体が不自由の母(田中絹代)は後妻という温かみのない暗い家庭の中で一家を切り盛りしながら、不良化し結核に冒される弟(川口浩)を必死にかばうが、やがて弟は死んでしまう。そんな気丈で慈愛に満ちた姉・げんを、豊かな感受性、西欧風な知性と日本的な古風さを秘めた個性を存分に発揮した素晴らしい演技で、深い感動を与えた。これで毎日映画コンクール、ブルーリボン賞の主演女優賞を受賞。またこの時期、パリで上演されたジャン・コクトー演出の舞台『ぬれぎぬの妻』に主演。夫を戦場に取られた妻が息子に自分の“影”を父親だと思わせたことから起きる悲劇で、コクトーの耽美的な演出に見事に応えた。その後も、帰国しては多くの作品に出演。市川崑監督「黒い十人の女」61、小林正樹監督「からみ合い」62、そして同じく小林監督のにんじんくらぶ自主製作の大作「怪談」64に出演。小泉八雲の小説を原作に『黒髪』『雪女』『耳無抱一』『茶碗の中』の4話を取り上げたオムニバスで、岸は『雪女』で主演。仲代達矢を相手に、雪女とその化身であるきこりの美しい妻を演じ、女の優しさと凄絶さの二面を見せた。この「怪談」は製作費が3億1000万円に膨張したのに対し、配収は2億3000万円という結果になり、大打撃をこうむる。そして65年11月に有馬稲子が脱退、66年5月には岸が脱退したことにより事実上解体することになった。テレビには、日本テレビ『わかれ道』61、NET(現・テレビ朝日)『昨日と明日の間』63、『恋歌』69、NHK大河ドラマ『太閤記』65では織田信長の妹・お市の方で出演し、TBS『レモンのような女』67、フジテレビ『堀川波の鼓』69などに出演。映画は仏=伊=スペイン映画「太陽が目にしみる」65、若い内藤洋子と共演した「華麗なる闘い」69にも出演し、72年には斎藤耕一監督「約束」で萩原健一と共演する。日本海沿岸を北上する列車の中で隣り合わせた、看守付きで母の墓参に行く夫殺しの女囚とチンピラ強盗の、つかの間の愛と別れを描いた佳作である。彼女は自分に想いを寄せる年下の青年の一途な愛にほだされ、再会を約束して別れる女の哀れさを切々と演じた。ラスト、釈放され青年との再会の場所の公園で、彼が逮捕されたのも知らずにひとりブランコに乗って来るはずのない青年を待ち続ける姿に、女優としての圧倒的な存在感を垣間見ることができた。同年の小林正樹監督のテレビドラマ『化石』にも出演、この作品は75年に再編集されて劇場公開もされている。73年には「男はつらいよ・私の寅さん」で12代目のマドンナ、アメリカ映画「ザ・ヤクザ」74では高倉健とロバート・ミッチャムを相手に過去のある女を演じ、蔵原惟繕監督「雨のアムステルダム」75では再び萩原健一の相手役を演じた。この75年1月にはイヴ・シァンピとの離婚を発表している。77年、市川崑監督の“金田一”シリーズ第2作「悪魔の手毬唄」に近親相姦を防ぐため次々と3人娘を殺害する悲しい犯人を演じ、第4作「女王蜂」78ではヒロイン中井貴恵の美貌の家庭教師を堂々と演じた。以降は、五社英雄監督「闇の狩人」79で殺し屋の元締めの情婦、市川監督の山口百恵引退映画「古都」80で百恵の母親、また市川監督「細雪」83には長女役で、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子と華やかに共演。熊井啓監督「式部物語」90では神秘的な魅力を持つ教祖の尼に扮して毎日映画コンクールの田中絹代賞を受賞。同じく市川監督「天河伝説殺人事件」91では子供のために殺人を犯す悲しい母親役を余裕たっぷりに演じた。01年には9年ぶりに市川監督「かあちゃん」に主演。天保時代を舞台にたくましく生きる貧乏家族の一家を描いたもので、岸は人情味に篤い母親を魅力たっぷりに演じている。山田洋次監督「たそがれ清兵衛」02にはゲスト出演、新城卓監督「僕は、君のためにこそ死ににいく」07では知覧で食堂を経営する“特攻隊の母”を演じている。また80年には市川崑演出の西武劇場『情婦』で初舞台。テレビドラマは、NHK『秋の一族』94、『碧空のタンゴ』01、『こころ』03、TBSの向田邦子終戦特別企画『いつか見た青い空』91、『蛍の宿』97、『昭和のいのち』98、『あさき夢見し』99、ほかにTBS『マリア』01、『末っ子長男姉三人』03、『99年の愛』10、フジテレビ『ワルシャワの秋』03、日本テレビ『火垂るの墓』05、『嘘をつく死体』06、『鏡は横にひび割れて』『予告殺人』07、『東京大空襲』08など。著作に『巴里の空はあかね色』83、『砂の界へ』85、『ベラルーシの林檎』94、『30年の物語』99、『風が見ていた』04、フランスの絵本の翻訳『パリのおばあさんの物語』08などがある。

キネマ旬報の記事

2014年5月下旬号

第二回 新・午前十時の映画祭:レポート オープニングイベント「細雪」岸惠子トークショー

2006年7月下旬特別号

フロント・インタビュー:岸惠子

2002年10月上旬号

特別インタビュー 素晴らしき映画女優:岸惠子

1983年6月上旬号

ザ・インタビュー:岸恵子