太陽光パネルの設置に伴い地主から立ち退きを迫られた桃農園の家族の物語。冒頭で廃車の中で遊ぶ子供たちが突然現れたショベルカーに驚き、あっという間に廃車が宙吊りにされていた。土地の再開発は日本でも大きな社会問題だが、イタリアでも同様に違いない。
農園の主はパネル管理の仕事を打診されるがその場で拒絶する。将来の展望が見えないまま家族たちは最後の収穫を迎えることになる。長男は小遣い稼ぎで大麻の栽培に手を出し、長女は村祭りで披露するダンスの練習に余念が無い。まだ幼い次女は双子のいとこと走り回っては隣家のスイカにいたずらしていた。長年繰り返してきた農園の日常風景が次第に一変していくのだが、並行して描かれるのは大手卸売業者による買い叩き。農家の担い手たちが団結しトラクターで相手方に乗り込んで荷台の桃を路上に散乱させる下りは見ていて痛ましかった。土地の再開発と同じで利益至上主義の人間社会が招いた弊害だ。
家族と言えど一枚岩とはいかず叔父夫婦はパネル管理の仕事に宗旨変えする。庭のプールで家族全員が大はしゃぎするのだが、こんな幸せそうな風景もこれが最後になるかもと思ったら素直に喜べなかった。
ラストでは遂に桃の木が重機によって伐採されていく。その横で歓声をあげて遊ぶ子供たちとのコントラスト、本当に無常感が込み上げるシーンでした。