脇役一筋70年、死の直前まで現役を貫き、92歳で亡くなった俳優・織本順吉。2000本以上ものTVドラマ・映画に出演し、地味だが情感あふれる脇役を演じ続けた。だがその裏では、家族と共に生きられない一面があった。その父へ、復讐心からカメラを向けた娘。老いて、体の自由が効かなくなり、セリフ覚えが覚束なくなり、感情を抑えることができず、家族相手に子どものように泣きわめき……。そんな晩年の父を、娘の視点で赤裸々に撮り続ける。それはカメラを挟んだ格闘であり、カメラを挟むことでようやく向き合えた父と娘の記録でもあった。そして続けるうち、自らの業をさらけ出しているのは、撮られる父か、撮り続ける娘か、わからなくなっていった。老いるとは何か。家族とは何か。生を全うするとは何か。誰もが抱えるこの命題に、父の死を通して向き合う。