半年ぶりに帰国した佐川は恋人の野々村夕子に逢いにいったきり、何の音沙汰もなかった。不信に思った妹の圭子と婚約者の高木は、蓼科山中の野々村家を訪れるが、母親の志津から、佐川は四日前に帰ったこと、夕子は死んでいることを知らされて、途方にくれた。しかし、夕子の墓の近くで佐川のカフスボタンを拾った二人は何か秘密めいたものを感じ、野々村家に一泊することになった。その夜圭子は血まみれの手をした夕子の亡霊に半狂乱になった。一夜明けて、二人は医師の山口から、夕子の死因は車の事故による内臓破裂だと聞かされるが高木は作業員から夕子は土葬されたことを知り、新たに疑惑が生じた。一方、圭子は志津に兄と夕子の行方を言及したが、志津と山口に監禁されてしまった。そのころ、高木は作業員とともに、夕子の寝棺の蓋を開いたが、棺の中は空っぽ。その時、闇の中から二人を襲った黒い影それは野々村家の下男、源造だった。高木と源造の格闘をみて、逃げ出した作業員は途中、夕子に喉首を切り裂かれ息絶えた。その白い影を追って野々村家に辿りついた高木は志津から呪われた夕子の運命と死ぬ間ぎわにかけられた催眠術の話を聞いた。一方地下室の圭子はかくし扉を発見、隣室に立ち入る、そこには喉元をくいちぎられた佐川のかわりはてた姿があった。圭子の悲鳴を聞いてかけつけた高木は一緒に逃げ出さんとしたが、その背後に山口の拳銃が光っていた。間一髪、その山口の喉首めがけて短剣を一閃したのは夕子であった。山口が息絶えると同時に夕子の術が解け、その顔面に、生前の面影がよぎり、そのまま床に横たわった。そのやすらかな死顔の上に静かに月光がさしこんでいた。