結婚後四年、並木亮太郎と妻文子の間には冷い倦怠の空気が流れている。ある日曜日の朝、些細なことからいさかいを始め、亮太郎はプイと家を出て行った。味気ない思いで夕方を迎えた文子がお菜の買い出しから帰ると、新婚旅行に出かけた筈の姪のあや子が待っていた。旅行先で花婿が友人と飲みに出かけ、朝帰りしたので、ケンカしたというのだ。まもなく亮太郎も戻って、その話を聞き、男性の立場を弁護したが、良人に多分の不満を持つ文子や、若いあや子に攻撃されるばかりだった。数日後、隣家へ新婚間もない今里念吉と雛子が越して来、雛子の若々しい肢体が、亮太郎の目に眩しく映った。たまたま雛子と二人だけで映画を見ることになって、亮太郎は久しぶりの刺戟に興奮を覚えた。次の日、亮太郎が出社すると、部長から会社の経営が思わしくないので人員整理があると聞かされ、自棄半分の彼は同僚と徹夜麻雀で家を明けた。翌日の昼休み、文子とデパートの屋上で待合せた亮太郎は、退職金を貰ったら、田舎でくらすつもりだといった。文子が帰宅すると、雛子が死んだ牝鶏をさげてやって来た。文子の家の飼犬が幼稚園の鶏を噛み殺してしまったのである。文子に代って園長から嫌味をいわれ、多少業腹の雛子は、並木家に対する近所の悪評を洗いざらいまくし立てた。その夜、亮太郎が園長から無理矢理買わされた鶏を会社の同僚たちと食べていると、近所の“平和会議”から帰った文子はひどく機嫌が悪かった。正面衝突した亮太郎と文子の感情をときぼぐしたのは、良人と仲直りのできたあや子からの手紙だった。亮太郎と文子は庭へ転って来た紙風船をつき始めた。二人はお互に励まし合って、この厳しい世の荒波を乗り切って行くことだろう。