男は何故、自転車を盗んだのか? そして男は何故、ペダルを漕ぎ続けたのか? これは釜石に住む1人の男が、自転車で走り続けた7日間の記録である。その男の名は斎藤鉄男(杉本哲太)41歳。製鉄所の工員である。「ジャン、ジャン、ジャン…」。ある朝、鉄男の頭の中で打鐘の音が鳴り響く。「ジャン、ジャン、ジャン…」激しい発作が鉄男を襲う。鉄男は自転車を盗んだ。ハンドルに手を掛け思うに任せてペダルを漕いだ。鉄男はどこに行こうとしているのか。一体何に向かっているのだろうか。瞬く間に自転車は釜石を抜け出し、吹雪の仙人峠を越えていく。「漕ぎなさいよ、思いっきり」。7日目の夜、鉄男は池袋の雑踏の中に立っていた…豊かになる。戦後60年余、日本人は一つの目標に向かって走り続けてきた。走り続けて、手に入れたものは何だったのだろう? 失ったものは、何だったのだろう? わたし達は果たして何者になったのか? 見失ってしまった「何か」を探し求めて、主人公は走り出した。家族を捨て、職場を捨て、故郷を捨て。できることを全力を挙げてやる。明日はほかにあるのではなく、あなたの中にある。「漕ぎなさいよ、思いっきり。」答えは肉体が知っている。