2014年11月10日、“最後の映画スター”高倉健が他界。日本映画のひとつの時代が幕を下ろした。1960年代のプログラム・ピクチャー全盛期に任侠映画のブームを牽引、映画館に詰めかけた観客を熱狂させ、主題歌を合唱させ、時には男泣きさせた。スクリーンから発せられる圧倒的な存在感にふれた観客は親しみと敬意を込めてこう呼びかけた――「健さん」。しかし、生前に限られたインタビューしか受けなかったこの不世出のスターの素顔は、わずかな情報の中でしか明らかにされていない。彼は何を考え、どう行動し、何を成し遂げてきたのか。マーティン・スコセッシやマイケル・ダグラス、ジョン・ウーといった海外の名匠、名優のインタビューから映画、そして日本の美学を紐解き、山田洋次や降旗康男、澤島忠ら日本映画の黄金期を彩り今日もなお活躍し続けるクリエイター陣の証言からは、高倉健の輝かしいキャリアとともに古き良き日本映画の歴史をも辿っていく。