公務員の湯佐薫(寛一郎)は出張で、学生時代を過ごした地方都市にやってくる。そこで、20年前に下宿した月光荘の大家、川島雪子(吉行和子)が熱中症で孤独死したことを新聞記事で知る。薫の脳裏に、教養もあって文化的な香りを漂わせる老嬢の雪子と、肉親や職場の人間関係に屈折した感情を抱くテレフォンオペレーターの小野田(菜葉菜)という二人の女性の過剰な好意と親切に窒息しそうになった日々がよみがえる。大学生だった薫は、二人がサロンと呼ぶ部屋に招かれ、ご馳走責めとぽち袋のお小遣いの歓待を受ける。薫は二人の女性の欲望とエネルギーに底知れない恐怖を覚え、月光荘を逃げ出した。それから女性と付き合うのが苦手になり、今も独身で暮らしている薫は、月光荘を再び訪れようとしていた……。