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八千草薫

  • Yachigusa Kaoru
  • 出演/出演(声)
本名 谷口瞳(旧姓・松田)
出身地 大阪府大阪市
生年月日 1931/01/06
没年月日 2019/10/24

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略歴

大阪府大阪市の生まれ。本名・谷口瞳(旧姓・松田)。会社員の父を幼少時に亡くし、以後は母ひとり子ひとりで育つ。戦時中に思春期を迎え、自宅が空襲で焼けたため、“色のある、夢のある世界”に飢えていたことから華やかな世界に憧れて、プール女学院在学中の1946年、宝塚音楽学校を受験して合格。翌47年、宝塚歌劇団に入団する。同期には淀かおる、百ちとせがいた。同年4月、『春の踊り・世界の花』で初舞台を踏み、『文福茶釜』51で子狸をコミカルに演じて注目を集める。同年の『河童まつり』に河童の勘平役で出演し、スターの地位を確立。その後はとぼけたコミカルな役よりも、無邪気で純情可憐な娘役で人気を博し、『虞美人』51の桃娘、『源氏物語』52の若紫役などで好評を得た。映画には、春日野八千代をはじめ歌劇団員たちが出演した東宝配給の「宝塚夫人」51で初出演。「目下恋愛中」51、「昔話ホルモン物語」52に準主演したのち、翌年からは映画に力を入れ始める。54年から始まった稲垣浩監督の「宮本武蔵」三部作でヒロイン・お通役に抜擢され、55年にはイタリアのチネチッタで撮影された日伊合作のカルミネ・ガッローネ監督「蝶々夫人」でヒロインを演じ注目された。56年5月、宝塚歌劇団に新設された映画専科に編入され、以後は舞台出演は途絶えて映画をメインに活躍する。いずれも可憐な娘役が多かったが、57年の豊田四郎監督「雪国」では岸惠子演じるヒロインの義妹に扮して、エキセントリックな女性を熱演した。57年5月末日をもって、宝塚歌劇団を退団。同年7月には主演作「乱菊物語」56を監督した17歳年上の谷口千吉と結婚する。親子ほども歳の離れたふたりの結婚は、話題と波紋を呼んだ。それまでは東宝&宝塚映画のスターだったが、58年には他社映画へも出演し始め、芸術座『蟻の街のマリア』で舞台にも復帰。また、ラジオ東京テレビ(現・TBS)『中山千里』でテレビ初出演するなど、活動の場をさらに広げた。翌59年からは舞台へと主力を移し、60年4月から64年8月まで東宝演劇部と専属契約を結ぶ。並行して各社の映画にも出演を続け、65年の篠田正浩監督「美しさと哀しみと」では、かつて愛した男と20年ぶりに再会した女流画家の心の葛藤を見事に表現し、第12回アジア映画祭助演女優賞を受賞。NHK『三四郎』61、『花の生涯』63、『虹の設計』64、『赤ひげ』72、『斜陽』75、日本テレビ『田園に死す』62、『張込み』70、『春のもつれ』74、『俺たちの旅』75、『俺たちの祭』77、フジテレビ『大番』62、『女の年輪』64、『銭形平次』66、『船場』67、『霧の旗』68、『大坂城の女』70、『徳川おんな絵巻』71、『おやじの嫁さん』73、TBS『娘たちはいま』67~68、『マイホーム70』70、『赤い疑惑』75などのテレビドラマにも出演を重ねつつ、山田洋次監督「男はつらいよ・寅次郎夢枕」72では寅さんに惚れられるマドンナの美容院女主人を演じ、寺山修司監督の自伝的映画「田園に死す」74にも出演。夫・谷口が日本青年海外協力隊の活動を描いた「アサンテ・サーテ」75では、アフリカのタンザニアロケに同行して出演もしている。79年の「英霊たちの応援歌・最後の早慶戦」以降はしばらく映画出演が途絶えたが、代わりにTBS『うちのホンカン』75~81、日本テレビ『前略おふくろ様Ⅱ』76などの倉本聰脚本作品、テレビ大賞主演女優賞を受賞した山田太一脚本のTBS『岸辺のアルバム』77、向田邦子脚本のNHK『阿修羅のごとく』79など、名脚本家の人気ドラマに出演し、80年代にかけてお茶の間のスターとして活躍。テレビ朝日『遙かな坂』78、『ある日突然!?スパゲティ』80、『隣の未亡人とおかしな2人』88、NHK『あめりか物語』79、『徳川家康』83、『シャツの店』86、『独眼竜政宗』87、日本テレビ『ちょっとマイウェイ』79~80、『季節が変わる日』82、TBS『源氏物語』『熱い秋』80、『茜さんのお弁当』81、『家族の神話』82、フジテレビ『いつも輝いていたあの海』84、『風祭』84、『私の可愛いひと』86など数々の話題作に出演する。ドラマにおける八千草薫は、どこか浮世離れした品のある母親像を、日常と理想の境界線上でリアルに感じさせる独特の雰囲気に魅力があった。87年、神山征二郎監督「ハチ公物語」で、仲代達矢演じる大学教授の夫人役で久しぶりに映画出演。その後も、本数は少ないながらもコンスタントに顔を出すようになる。2003年には、森田芳光監督による映画版「阿修羅のごとく」に出演。それぞれに問題を抱えた四姉妹とその両親の絆を描いた本作で、彼女は79年のテレビドラマ版の時には次女を演じていたが、かつて大路三千緒が扮した母親役を好演。この演技で日刊スポーツ映画大賞助演女優賞、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞した。さらに西川美和監督「ディア・ドクター」09では、自分が重病と承知で笑福亭鶴瓶演じる偽医者の診療を受け続け、長年住んだ家でひっそりと死のうとするひとり暮らしの老女の精神的な駆け引きを繊細に表現して、毎日映画コンクール、報知映画賞の助演女優賞に輝いている。ほかに映画賞は、04年に毎日映画コンクール田中絹代賞、09年にTAMA映画賞特別賞などを受賞。舞台では『女系家族』『エドの舞踏会』の演技によって86年の菊田一夫演劇賞、また87年に都民文化栄誉賞、91年にNHK放送文化賞、95年に文化庁長官表彰、97年紫綬褒章、03年旭日章授章などを受けている。テレビドラマはほかに、NHK大河ドラマ『八代将軍吉宗』95、『利家とまつ・加賀百万石物語』02を始め、同局『びいどろで候・長崎屋夢日記』90、『やんちゃくれ』98、『いちばん綺麗なとき』99、日本テレビ『お父さん』90、『西遊記』93、『お玉・幸造夫婦です』94、『フードファイト』00、『受験の神様』07、フジテレビ『逃亡者』92、『アンティーク・西洋骨董洋菓子店』01、『東京物語』02、『愛し君へ』04、『拝啓、父上様』07、『鯨とメダカ』08、『ありふれた奇跡』09、TBS『女の言い分』94、『恋の時間』05、『白夜行』06、『歸國』『99年の愛』10、テレビ朝日『外科医・柊又三郎』96、『恋人はスナイパー』01・02、『やまない雨はない』10など多数。NHK連続テレビ小説『風見鶏』77、『ロマンス』84、『君の名は』91ではナレーションをつとめている。舞台は宝塚退団以降、『がしんたれ』『敦煌』『雲の上団五郎一座』60、『放浪記』61・62、『六本木心中』『悲しき玩具』62、『孔雀館』65、『二十四の瞳』72、『宵待草』73、『越前竹人形』76、『階段の上の暗闇』80、『花月亭の女たち』86、『花へんろ』87、『土佐堀川』89、『楡家の人々』91、『乱舞』92、『男が家を出るとき』93などのほか、『女系家族』『古都憂愁』『細雪』『花岡青洲の妻』など再演された演目も多い。近年は09年の明治座公演『晩秋』で健在ぶりを見せた。登山が趣味の谷口千吉とは、ともに海外まで山登りに出かけるほどのおしどり夫婦として知られた。山好きな彼女は85年に自然環境保全審査委員となり、自然保護問題にも積極的に取り組んでいる。長年、人生のパートナーだった谷口千吉は、07年に逝去。ふたりに子供はいなかったが、結婚から50年目の別れであった。現在では、70年代の理想の母親から、可愛らしいおばあちゃんへとイメージが移ってきているが、女性としてのみずみずしさを失わずに、観る者に夢を与え続けるその生き方は見事と言うほかない。2019年10月24日、すい臓がんのため、都内の病院で逝去。享年88歳。

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