ファンタジーでした

　2025年の日本映画。馳星周の同名小説の映画化作品。
　SNSとは無縁の山奥の爺さんと多門との逸話を盛り込むために結構無理やりな設定になっちゃいましたね。多門の最期は内山とのやり取りでもわかることなので、どうせ無理を通すんだったら和正の存在を考えて欲しかった。そんな無理を通したあの柄本明が演じた爺さんのパートは本当に必要だったのかな。美羽と宇宙少女が焼肉を食べるシーンではいったい何を言いたかったのかなあ。多門が和正や美羽の前に現れたのは人の心の中にある罪の意識に反応したんだろうか。多門と光とのつながりって前世からのものだったのだろうか。それにしても内山家、東日本大震災で被災し移住先の熊本でも震災で被災するって不幸過ぎるなあ。多門の話を聴いた美羽はこれからどうするんだろう。あの家族が受け入れるとも思えないし、和正の家族に和正や多門との出会いと別れを報告に行くんだろうか。出所後の美羽は憑き物が落ちたような優しい顔になっていたけど、この先世間の荒波を渡っていけるんだろうか、心配になりました。

あらすじ：東日本大震災から半年後の名取。和正は職を失い先輩の手伝いで被災家屋からの盗品の運搬をしていた。コンビニで買い物をしていた時一匹のシェパードが和正のあとをついてくるようになる。首輪には多門と刻まれた札が付いていた。自宅に連れて行くと認知症の母が娘時代に飼っていた犬と思い込み可愛がり認知症で籠りっきりだったのが散歩に出かけるようになる。和正は先輩から外国人窃盗団のドライバーを依頼され、仙台で宝石店を強盗する三人組の送り迎えをした。しかし最後と決めた仕事で窃盗団の仲間割れに巻き込まれ怪我をし多門も窃盗団の女性に連れて行かれてしまう。多門のいなくなったことで母はまた閉じ籠ってしまい、姉からは人でなしとなじられるのだった。しばらくたった時、滋賀の山で美羽が死体を埋めていたところにシェパードがやって来る。追い払おうとしたが怪我をしていることがわかったため獣医へ連れて行くと、埋め込まれていたチップから多門という名前と釜石から来たことがわかる。美羽はレオと名付けSNSに犬との生活をアップし始める。レオがぐったりして獣医へ連れて行こうとしたところに和正が現れる。SNSの写真から多門と確信し住所を調べ上げてきたのだった。血液が感染していたレオは入院となる。美羽は退院したレオを連れて妹の結婚式に向かうが和正が強引に同行する。デリヘルをしている美羽の来訪を家族は望まず気まずい雰囲気になっていた時、和正が飛び入りで歌い美羽の笑顔を見る。しかし森の中で死体が発見されたというニュースが流れ、美羽は湖に入って自殺を図る。それを和正が止め、多門が向かう先で逢いたい人に出会う話を聞きたくないのかといわれ、和正と共に多門が向いていた西へ向かう。ガソリンがなくなって止まったところで歩き出し一番近い警察署に出向いて自首する美羽に出所まで待っていると声をかける和正だった。しかしガソリンを買って車に入れていた時居眠り運転のトラックが突っ込んできて和正は亡くなってしまう。2016年熊本。震災後移り住んできた内村家。息子の光は震災後口を利かなくなり絵を画くばかりだった。ある日庭にみすぼらしいシェパードが現れると光が駆け寄り抱きしめる。埋め込まれたチップから多門だとわかる。5年前光は祖母といつも公園で遊んでいたが、一匹の子犬が光と遊ぶようになり、その犬の名前が多門だったと光の父がかすかに覚えていた。祖母も多門の飼い主も震災で亡くなっていた。出所した美羽は図書館のコンピューターでネット上で多門の書き込みがないかを調べ内村家にたどり着く。レオと名付けしばらく一緒にいたことや和正との話を書き込むとお礼の返事が来た。そこへ和正が現れ、多門がその後鳥取の山奥で老人の最期を看取ったことや、熊本で光と過ごしたこと、そして2016年の熊本地震で内山家が倒壊した際に光をかばって亡くなったことを話すのだった。