炎上と倒壊へと導かれ

ペコス川より西の無法地帯で，ロイ・ビーン（ポール・ニューマン）と名乗る無法者が，勝手に判事になり，でたらめな采配によって街をわがものにしていく．そして行き過ぎた彼の街は，やがて破滅にいたるだろう．その顛末も当然のようにでたらめであるが，その無定形な物語の有り様に輝く魅力が宿っている．
酒場に立ち寄るビーンがいる．そこに死んだような人々の視線が集まる．太った女の体が洗われている．ビーンは馬に引きずられ，荒野に放置されている．弱った彼が銃を求めると見つめる先住民の少女マリー（ヴィクトリア・プリンシパル）がどこからともなく銃を持ってくる．そしてビーンの暴力が発動する．ラサール牧師（アンソニー・パーキンス）が馬に乗って現れ，ビーンが殺した悪者と商売女を，それでも埋葬することにする．娼婦の便所になっていた分厚い法律書を手に，ビーンは判事になると宣言する．牧師のナレーションは聞こえているが，彼もそのうち死んでしまうらしい．ビーンの店には，「リリー・ラングトリー」（エヴァ・ガードナー）という女優の肖像が掲げられ，崇め奉られている．この街にやってきた熊と戯れるビーンたちであるが，その熊もやがて殺される．馬もいれば，ヤギもいる．こうした雑多さの中に，白い顔，白い髪をしたバッド・ボブ（ステイシー・キーチ）という狂人がやってきて銃を撃ったりもしているが，彼も殺されていく．
ビーンと同様に，それでもビーンとはどこか異なる法を扱っているのは，ガス（ロディ・マクドウォール）という弁護士で彼は事務所をこの街に構える．公衆の面前で絞首刑にして，法を犯したものをさらすことがビーンのやり方である．彼は自ら吊るそうともするし，彼が安楽椅子でくつろいでいる向こうに，吊られたものが見えている．やがて時が経つ．ビーンの娘ローズ（ジャクリーン・ビセット）は勝ち気であり，ポーカーのテーブルに臨んでも強気と強運を場に見せている．
ガスの街となってしまったセットは，精算されるように，燃え，爆発し，倒壊していく．