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鑑賞日 2025/03/28  登録日 2025/03/28  評点 79点 

鑑賞方法 映画館/東京都/TOHOシネマズシャンテ 
3D/字幕 -/-
いいね!レビューランキング -位

鴉の囁き

深瀬昌久という写真家のことは全く知らなかったが、鴉をモチーフにした連作や、妻の洋子をモデルにした作品群はどれも生命力に満ちていると感じた。
どうしたら一瞬の切り抜きである写真に躍動感を与えることが出来るのか。
劇中の中で深瀬は、あくまでも被写体は被写体であり、それ以上の意味はないと語っていたが。

深瀬昌久は写真館の家の子として生まれた。
彼は芸術として写真を学びたいと大学への進学を希望するが、彼に写真館を継いでもらいたい父親はその要望を拒否する。
さらに激昂した父親は部屋に息子を閉じ込めてしまう。
やがて彼の心の闇は、鴉の化身となって現れ、彼を芸術の道へと誘うことになる。

これは愛と芸術の物語である。
深瀬は自由奔放な洋子に出会い、彼女の美しく活力に溢れた姿を次々と写真に収めていく。
そして彼女を撮ることが彼の芸術の大きな主題となる。
やがて、二人は結婚し、愛のある家庭を築こうとする。
が、愛されることを知らずに育った深瀬は、次第に写真に取り憑かれたようになり、洋子を蔑ろにするようになる。

鴉の化身は囁く。
片手間に出来る芸術などない。
芸術家はまっとうな幸せを手に入れることは出来ないのだと。

この映画の中で深瀬は、鴉の化身にそそのかされて写真家として生きる道を選んだように見える。
そして深瀬自身もそのことで鴉を責める。
が、鴉の化身は彼自身の鏡でもあるのだ。
写真に没頭したのも、洋子を裏切ったのも、すべて彼が選択したことだ。
ただ、時に飛び抜けた才能を持った者は、本人の意志とは関係なく運命に導かれるものなのかもしれない。
だとすると、深瀬には鴉の化身の言葉に抗うことは出来なかったともいえる。

とにかく写真に対する深瀬の感性は凄まじい。
おそらく本人にも分かっていない部分が多かったのではないか。
深瀬は写真のために、愛や幸福を捨てたように見えるが、彼はずっと愛を求め続けて来たのだろう。
父親を疎ましく思いながらも、どこかで彼は父親に認められたかった。
そして愛情表現が苦手なだけで、父親もまた深瀬のことをずっと気にかけていたことが分かる。
彼の後半の猫を被写体にした作品群も印象的だ。
いずれも躍動感とユーモアに満ちていて、愛情がなければ撮れない写真だと感じた。

この作品自体がとてもアーティスティックで、随所に作り手の深瀬昌久へのリスペクトが感じられた。