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2025/2/12
「キネマ旬報」2月号は発売後SOLD OUTしました。特集は「2025年、映画の旅」(70P超!公開待機作ラインナップ特集)。表紙・巻頭インタビューは、派手に痛快なコンゲームを繰り広げる「劇場版 トリリオンゲーム」主演の目黒蓮。
2025/02/05
「キネマ旬報2月号増刊第98回キネマ旬報ベスト・テン発表号」発売中! 2024年度ベスト・テンの全順位と講評を誌面にてぜひご覧ください。
2024/07/11
1919年(大正8年)7月11日「キネマ旬報」は映画好きの学生たちによって誕生しました。雑誌の100年の歴史を俯瞰した記念ムック「キネマ旬報の100年」発売中です!
2024/02/05
「キネマ旬報2月増刊第97回キネマ旬報ベスト・テン発表号」発売中! 2023年度ベスト・テンの全順位と講評を誌面にてぜひご覧ください。
2024/02/01
2023年 第97回キネマ旬報ベスト・テン第1位の作品と個人賞を「キネマ旬報WEB」にて発表いたしました。
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月(2023)
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月 相模原市での知的障害者殺傷事件に着想した辺見庸の原作小説を石井裕也の監督・脚本で映画化した作品。人は自分の見たくないものを排除して、無いものとして平穏な日常を過ごそうとする。舞台となる森の奥深くの障害者施設も、ちょうど世間から障害者を排除する形で存在している。そこに、処女作で文学賞を受賞するも、編集者からの要請に応じた改変から、書けなくなった小説家、堂島洋子(宮沢りえ)が職員として採用される。そして、そこで入所者に対する虐待・暴行・監禁を目撃する。施設の様子の描写は、自分にとってもまさに見たくないものであり、何度も見るのを止めて逃げ出したくなった。ただ、「目を背けることは許されない」と自分に言い続けていた。 これほどの題材を映画化し、これだけ豪華なキャストを集めた製作総指揮の故河村光庸をまずもって称賛したい。加えて、石井監督も、原作にない堂島洋子の夫婦をドラマの中心にあて、過去に障害のある子供を失い、今も妊娠中で障害の可能性に怯えて、中絶(つまりは「排除」)を迷っているという設定を加えている。このことにより、より「排除」の是非ということが、強く迫ってくる。映画的な救いの可能性を作るとともにすばらしい脚色だと思う。 話は、同僚職員のさとくん(磯村勇斗)が、意思疎通のできない入所者を「心がない」として、延命させることに無意味との考えに取り付かれていく。かつて、仕事で知的障害者施設に見学に行った際に、過酷な職場環境、特に全くの変化が見られない入所者に対して、職員がどのように日々モチベーションを保つのか危惧した記憶がある。その時に、「生命の尊厳」はそうした現実を排除して、ないものにしている外部者のきれい事のようにさえ思ってしまった。今回も、自分自身、さとくんの台詞に説得力を感じてしまうことに危険な思いがした。そのくらい、さとくんを演じた磯村勇斗は、素晴らしいと思う。一歩間違えれば抜け出せない領域にはいってしまわないか心配したほどである。洋子の夫昌平(オダギリジョー)とさとくんのやりとりの中で、怒りのあまり昌平が「自分の子供は意思疎通ができなくても、懸命に生きた」というけれど、それは親の願望であって確認できる術はないのではないかとの考えも頭を離れなかった。 そして、終盤、あの事件と同じ、さとくんによる惨劇が繰り広げられる。入所者に丁寧に声掛けして、反応がないと殺すことを繰り返す姿は恐怖以外の何物でもない。その動機となるさとくんの考え方は許しがたいが、正直、心は今も揺れている。 身の危険を顧みない磯村勇斗の演技に加えて、宮沢りえは、リスクを承知でよくこの仕事を受けたと思う。子供を失いギリギリの精神状態でなんとか夫と支えあっている姿、さらに、妊娠に際し自らも「排除」を考え、加えて、作家として書くという本能も忘れていないという非常に難しい役柄である。また、脇を固める同僚の職員陽子(二階堂ふみ)についても、「宗教2世」として父親からの虐待を受け(毎食卓でワインをがぶ飲みするシーンの異様さ)、まるでモーツアルト対するサリエリのように、生み出す才能はないものの他者の作品を分析することはできる悲哀など(洋子自身が気づいている自作の欠陥を見抜いているのだ)、しっかり描きこまれている。さらに,昌平の職場の同僚のクズさ加減など、端役にまでしっかりと存在感を与える石井演出は素晴らしい。そのうえで、娘を殺害された母を演じた高畑淳子の演技の中に「生命の尊厳」を印象付けるのも見事である。 惨劇の後も、堂島夫婦は。ささやかであっても「物を作る喜び」により、生きていく力を見出す。これは、本作品の中でも。唯一の救いとも言えるものであるが、彼らが妊娠に対してどのような選択をしたのかは明確にしていない。つまり、我々は、考え続けなければならないのだ。
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