ここはパリにあるラテン・アメリカの新興国ミランダ共和国大使館の一室である。大使(F・レイ)を囲んでセネシャル(J・P・カッセル)とテブノ(P・フランクール)の三人が何やら密談をしている。やがて、大使がバッグからいわくあり気に取り出したのは麻薬のコカインだった。三人はニンマリとほくそ笑んで各自の分け前を手にして去った。その夜、セネシャル家の晩餐に招ばれていた大使とテブノ、テブノ夫人(D・セーリグ)、そして独身でアル中の女フロランス(B・オジエ)は連れ立って出かけたが、主人のセネシャル夫人(S・オードラン)は「約束は明晩です」といって怪訝な顔をした。仕方なく一同は行きつけのレストランに足を運んだが、そこでは今朝死んだという店の主人の通夜が行なわれていた。以後、幾度か食事をしようとするが、その毎にアクシデントが起こって何も食べられなかった。またある日に、こんなことがあった。再びセネシャル家の昼食に招ばれた大使とテブノ夫妻、フロランスが支度の整ったテーブルについて食事が始まるのを待っていたが、セネシャル夫妻はいっこうに姿を現わさない。二人は突然セックスの欲望にとり憑かれ、招いた客を放っぽりだして庭園で情交をむさぼっていたのである。そんなこととは知らない客たちは、さてはあの麻薬の件を密告されたのではとかんぐり、争って逃げ帰ったのである。その直後、セネシャル家に一人の司教が訪ねてきて、庭番に雇って欲しいという変な頼みをした。--ところで、数日前、セネシャル家に演習中の陸軍の大佐と、その軍隊が闖入するという事件があったが、そのお詫に大佐が、大使たちを晩餐会に招待した。しかし、一行は家を間違えてなぜか劇場の舞台の上にしつらえられた食卓にいたのである。幕が開いた途端、観衆たちは不様な恰好で食物を漁っている彼らをヤジリとばすという珍事が起こった。こうして、彼らの渇望している食事はすべて彼らの前に現われては消え、次第に食事を夢にまで見るようになった。数日後、大佐の家の晩餐会では大使と大佐の口論から、大使がピストルで大佐の胸を射ち抜くという惨事が勃発した。とうとう彼らの身辺に危機が及んできたようだ。セネシャル家の食事の最中に突然刑事がやってきて、一同は麻薬密売の容疑で逮捕されてしまったのである。警察に連行された大使たちは悪事にもかかわらず、内務大臣じきじきの取りはからいですぐ釈放された。しかし、彼らはだんだん現実の感覚を失っていき、あるときは、強迫観念から夢の中でまで食いそこなったり、恐ろしい夢にうなされたりするようになるのである。その頃、セネシャル家に住みこみ、淫猥な夢想を楽しんでいた司教は、瀕死の病人の懺悔に祈りをささげていた。ところが、病人が懺悔し終えるや否や、銃を手にした司教は銃口を病人の頭に向けたのである。病人の告白は司教に遠い昔、血まみれの中で起きた鮮烈な記憶を甦えらせていた。「私は昔、庭番でした。そのとき、私は冷淡な主人夫婦を殺したのです……」。何と殺された夫婦こそ、司教の両親だったのである。--さて、ブルジョワたちの怪奇な物語は、まだまだ続くようであるが、ついに彼らは一堂に会して待望の食事を楽しむ日を持つことができたのである。フォアグラ、年代もののブドウ酒、食卓には次々に豪華な料理が並べられていく。彼らは優雅な手つきでグラスを交わし、フォークとナイフを取る。と、突然激しくガラスを打ち砕く音がし、屈強なテロリストの一団が彼らを襲撃してきた。ブルジョワたちは一瞬のうちにテロリストに射殺された。こうして不可思議な幻想と現実のなかで、彼らブルジョワジーたちの饗宴は閉じられたのである。