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映画

映画人

     KINENOTE DATA       前日比
会員数 54,726 1
総鑑賞データ数 7,062,410 637
総レビュー数 932,629 114
鑑賞方法別データ数
映画館 1,833,476 213
レンタル 596,866 14
購入 124,684 11
VOD 559,021 120
テレビ 923,739 101
その他 158,585 10

香華

  • こうか
  • The Scent of Incense
  • ----

amazon


  • 平均評点

    77.2点(80人)

  • 観たひと

    110

  • 観たいひと

    11

  • レビューの数

    17

基本情報

ジャンル 文芸
製作国 日本
製作年 1964
公開年月日 1964/5/24
上映時間 201分
製作会社 松竹大船
配給 松竹
レイティング 一般映画
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
カラー/サイズ モノクロ/シネスコ
メディアタイプ フィルム
音声
上映フォーマット 35mm

スタッフ

監督木下恵介 
脚色木下恵介 
原作有吉佐和子 
製作白井昌夫 
木下恵介 
撮影楠田浩之 
美術伊藤熹朔 
梅田千代夫 
音楽木下忠司 
録音大野久男 
照明豊島良三 
編集杉原よ志 
スチル久保哲男 

キャスト

出演乙羽信子 郁代
岡田茉莉子 朋子
田中絹代 つな
北村和夫 敬助
岡田英次 野沢
宇佐美淳也 神波
加藤剛 江崎
三木のり平 八郎
村上冬樹 大叔父
桂小金治 呉服屋の番頭
柳永二郎 叶楼々主
市川翠扇 女将
杉村春子 太郎丸
菅原文太 杉浦
内藤武敏 村田
奈良岡朋子 江崎の妻
岩崎加根子 安子

解説

有吉佐和子の同名小説を「死闘の伝説」の木下恵介が脚色、監督した文芸もの。撮影もコンビの楠田浩之。

あらすじ

〈吾亦紅の章〉明治三十七年紀州の片田舎で朋子は父を亡くした。三歳の時のことだ。母の郁代は小地主須永つなの一人娘であったが、大地主田沢の一人息子と、須永家を継ぐことを条件に結婚したのだった。郁代は二十歳で後家になると、その美貌を見込まれて朋子をつなの手に残すと、高坂敬助の後妻となった。母のつなは、そんな娘を身勝手な親不孝とののしった。が幼い朋子には、母の花嫁姿が美しくうつった。朋子が母郁代のもとにひきとられたのは、祖母つなが亡くなった後のことであった。敬助の親と合わない郁代が、二人の間に出来た安子を連れて、貧しい生活に口喧嘩の絶えない頃だった。そのため小学生の朋子は静岡の遊廓叶楼に半玉として売られた。悧発で負けず嫌いをかわれた朋子は、芸事にめきめき腕をあげた。朋子が十三歳になったある日、郁代が敬助に捨てられ、九重花魁として叶楼に現れた。朋子は“お母さん”と呼ぶことも口止めされ美貌で衣裳道楽で男を享楽する母をみつめて暮した。十七歳になった朋子は、赤坂で神波伯爵に水揚げされ、養女先の津川家の肩入れもあって小牡丹という名で一本立ちとなった。朋子が、士官学校の生徒江崎武文を知ったのは、丁度この頃のことだった。一本気で真面目な朋子と江崎の恋は、許されぬ環境の中で激しく燃えた。江崎の「芸者をやめて欲しい」という言葉に、朋子は自分を賭けてやがて神波伯爵の世話で“花津川”という芸者の置屋を始め独立した。〈三椏の章〉関東大震災を経て、年号も昭和と変わった頃、朋子は二五歳で、築地に旅館“波奈家(はなのや)”を開業していた。朋子の頭の中には、江崎と結婚する夢だけがあった。母の郁代は、そんな朋子の真意も知らぬ気に、昔の家の下男八らんとの年がいもない恋に身をやつしていた。そんな時、神波伯爵の訃報が知らされた。悲しみに沈む朋子に、おいうちをかけるように、突然訪れた江崎は、結婚出来ぬ旨告げて去った。郁代が女郎であったことが原因していた。朋子の全ての希望はくずれ去った。この頃四十四歳になった母郁代は、年下の八らんと結婚したいと朋子に告げた。多くの男性遍歴をして、今また、結婚するという母にひきかえ、この母のため、女の幸せをつかめぬ自分に、朋子はひしひしと狐独を感じた。終戦を迎えた昭和二十年、廃虚の中で、八らんと別れて帰って来た郁代にとまどいながらも、必死に生きようとする朋子は“花の家”を再建した。それから三年、新聞の片隅に江崎の絞首刑の記事を見つけた朋子は、一目会いたいと、巣鴨通いを始めた。村田事務官の好意で金網越しにあった江崎は、三椏の咲く二月、十三階段に消えていった。病気で入院中の朋子を訪ねる郁代が、交通事故で死んだのは朋子の五十二歳の時だった。波乱に富んだ人生に、死に顔もみせず終止符をうった母を朋子は、何か懐しさをもって思い出した。母の死後子供の常治をつれて花の家に妹の安子が帰って来た。朋子は幼い常治の成長に唯一の楽しみをもとめた。昭和三十九年、六十三歳の朋子は、常治を連れて郁代のかつての願いであった田沢の墓に骨を納めに帰った。しかしそこで待っていたのは親戚の冷たい目であった。怒りにふるえながらも朋子は、郁代と自分の墓をみつけることを考えながら、和歌の浦の波の音を聞くのだった。

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  • 鑑賞日 2024/07/25

    登録日 2024/07/26

    評点 75


    鑑賞方法 その他 


    報われない愛

    本作は有吉佐和子の花柳界を舞台にした小説を原作とし、3歳のヒロインの父親の葬儀の最中に、日露戦争二百三高地の勝利を知らせ(1904年)から関東大震災(1923年)までが描かれたのが第1部 吾亦紅の章約88分。
    吾亦紅は「ワレモコウ」と読み、「親しい者への愛慕」や「移ろい行く日々」と言った花言葉の意味があるそうで、3歳だったヒロインが20歳で再婚していく母親との別れから母親の男性遍歴に翻弄されつつも赤坂芸者として華族の旦那を持つことで経済的バックアップを得つつ将校候補生との恋に賭ける人生を描く。
    そして本作全体に貫かれる母娘の切っても切れない縁(多分にヒロインの性格によるところと母親の狡さによるが)と母と娘と同姓でも全く異なる対照的な男性に対する(広くは家族や社会一般に対する接し方の)考え方の違い(恐らくヒロインは母親を反面教師として見ていた)が特徴的だ。
    母親は人生を享楽的に生きることを信条としていて慎みやタブーと言った道徳観は重視しない。
    彼女にとって男や家族、社会は利用すべき対象であり、金の為なら娘を芸者屋に売ることも厭わない。
    そして自らの好む着物で美しく着飾る生活こそが身上なのだ。
    ただ考えの浅さから貧しい生活に転落することもあり、花魁として体を売ることまで落ちることもある。
    それでもふてぶてしく生きる姿を時に涼しい顔で演じる音羽信子がたくましい。
    花魁となった母親と同じ店で再会する羽目になったヒロインが落ちぶれても母を慕う姿がいじらしい。
    ただ彼女が芸者として厳しい三味線の稽古で一心不乱に打ち込む姿に彼女の一途で真面目な(融通が利かない?)性格が対照的に描かれ、好きな将校のために芸者をやめ置屋の女将になって彼との結婚を念願する姿がいじらしい。
    2部 三椏(みつまた)の章では年号が昭和に変わり築地に「波奈屋」という旅館を営むまでに復活し、将校との結婚を切望する。
    しかし6年続いた関係も、将校の方から一方的に破談となる。
    彼の実家の興信所調査?からヒロインの母親が花魁遊女であった過去が判明して実家の反対に抗しきれなかったようだ。
    ここでヒロインの唯一の希望が母親の過去により消え去ることになる。
    2部の三椏の花言葉は「肉親の絆」でこの章の母娘の愛憎渦巻く展開を象徴している。
    母は44歳になっても昔の下男だった7歳年下の八郎との再婚を夢見る。
    年甲斐もない母親の行動に呆れながら、旦那の死をを知りながらも表立って葬式にも出られない自らの立場に深い孤独を感じる。
    この辺りからヒロインのきつい言動が目立つようになり、岡田茉莉子の美しかった売れっ子赤坂芸者から旅館の女将への変貌が顕著になっていく。
    戦争で再び旅館も焼けてしまい防空壕で暮らすヒロインの元に再び大阪の八郎の家から出てきた母親が同居する。
    大阪に戻ればいいと言いながらも旅館の再建に前向きなヒロインで再び再建するが、戦犯として大佐となったあの将校の記事を見かけ、再会したいと復員事務所を訪ねる。
    ただそれは家族を原則とし5人の人数制限がある。
    ヒロインは窓口の担当に何度も通いお願いして、半年以上たってやっと欠員が出たとの知らせを受けて多くの面会者とともにGHQのトラック荷台に乗せられて巣鴨プリズンに行く。
    この戦犯との面会手続のプロセスのシーンは珍しく、興味深い。
    ヒロインは家族と少し離れた位置から鉄格子越しにかつての恋人の姿を一目見る。
    もちろん家族は彼女(及び父親との過去)のことは知らない。
    彼女は彼に表向きな挨拶をして彼の姿を見て立ち去る。
    もちろん彼から彼女に声をかけることはない。
    このシーンは、彼女の余りにも一途な性格が彼女を支えてきたことを再認識しつつも、幸福になれない業を感じる。
    この業は母の業の裏返しなのだろうか?
    やがて大佐は知らぬ間に処刑され、彼女にも病が襲う。
    入院している間に母親も事故死し、あっけなく別れが訪れる。
    帰宅した家には男と別れて頼ってきた腹違いの妹と息子(甥)が来ており、庭に咲いている三椏の枝を甥にとってこさせ、仏壇に飾る。
    ここでタイトルの「香華」を象徴するシーンとなり、甥を養育することも決心していく。
    しかし彼女が母親ののぞんだ和歌山の実家の墓に入ることは断られ、父親の墓参りさえも断られる。
    そして自らの故郷の海の美しさを眺めながらも、息子のように養育した甥に連絡しようとするが電話は通じない。
    恐らく彼女の家族に対する愛はまたも報われないことを予感させる。
    何か報われない愛情豊か女の悲哀が切々と感じられて考えさせられた。


  • 鑑賞日 2022/06/19

    登録日 2022/06/19

    評点 50


    鑑賞方法 VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 


    木下恵介が映画化する意味あったのか?

    20代のころ新橋演舞場で舞台版を観た。舞台はものすごく面白かった記憶がある。
    この映画、つまらなくはないけど、木下恵介映画の魅力がない。音楽はいつもの木下忠司だが、単なる映画音楽に終始している。
    1部でいなくなる田中絹代と杉村春子がいい。特に1部の最後の杉村春子の演技が絶妙でもっと見たかったが、関東大震災になっておしまい。
    2部はお話がスイスイ進み過ぎ。
    敗戦後、焼け跡で食器を見つけて、次のシーンはもう立派な料亭になってるとか。
    主役の岡田茉莉子、乙羽信子、2人とも共感しにくいキャラクター。男も北村和男、岡田英次、加藤剛、みんなよくない。というか、見せ場がない。のり平だけですね、もうけ役は。
    有吉佐和子の映画化では《紀ノ川》の圧勝。
    男根主義の権化の戦争というものを上っ面でしか描いてないからでは?上っ面さえも描いてないか。加藤剛が戦犯として絞首刑になることだけかな。3時間強の長尺だが、《永遠の人》を2回見たほうが充実した時を過ごせるはず。


  • 鑑賞日 2022/05/12

    登録日 2022/05/13

    評点 90


    鑑賞方法 その他/TSUTAYA DISCAS 


    女の一生

    原作者有吉佐和子さんの本は何冊か読んでいるが本作品は未読です。有吉さん得意の「花柳界もの」ですが、そこにもう一つ得意の「女一生もの(紀ノ川など)」を合わせた作品です。
    主人公朋子(岡田茉莉子)の一生を母親郁代(乙羽信子)との愛情・葛藤を介して描く壮大な映画で木下恵介監督らしい作品です。
    朋子;3歳(明治)和歌山の女系一家須永家で母親郁代の長女で生まれる。奔放な母親は朋子を置いて他家へ再婚。朋子は須永家を継ぐのが約束されていたが、祖母の死去で須永家は没落。
    10歳ころ静岡の花柳界に半玉として売られる。しかし芸者として芸を仕込まれこれが今後の成功の元となる。しかしここに男に捨てられた母親が年を隠して花魁として同じ店で働くことに。この母親の素性がこの後のキーポイントとなるが。
    17歳、花の東京赤坂の芸者デビュー。その芸と美貌とで大御所の目に留まり水揚げされ小牡丹で一流芸者の道。旦那からの援助で置屋の女将となるが、関東大震災(大正)で全てを消失する。
    25歳で築地で旅館の経営者となるも、(昭和)今度は太平洋戦争の東京大空襲にでここも消失。焼け跡にまで母親は娘を頼って来る始末。
    戦後旅館花の家を再建。芸者のころ見染めた軍人の江崎(加藤剛)との普通の結婚を望んだが、彼は戦犯として死刑となってしまう。むなしい朋子であるが、異父妹安子の長男常治を養子としてもらい実の子供のようにかわいがる。
    63歳、母の遺骨を最初の夫田沢の墓に入れてもらうように和歌山を訪ねるがすげない仕打ち。故郷和歌浦の片男波を見ながら一生を振り返る朋子であった。
    本映画は2部構成になっており、一部 吾亦紅、ニ部三椏と花の名前がついている。映画の中でもこの二つの花の意味が語られる場面があったが、吾亦紅は、「もの思い」とか「愛慕」とかの意味があり、江崎への愛を表している。
    三椏は、「肉親の絆」。まさに性格も異なる母親との愛と葛藤。何度も何度も母親に「八らんとすぐに大阪へ帰れ」などの罵倒シーンがあるが、結局は流されて流されて母からは縁の切れない朋子であった。
    追;芸者遊びは、かつては男の遊びとして一度は遊んでみたいとのあこがれもあったが、今の時代にこの映画を見ると男社会のいやさの方を感じてしまう。


  • 鑑賞日 2022/04/24

    登録日 2022/04/25

    評点 90


    鑑賞方法 VOD/U-NEXT 


    「母娘という 断ちがたい絆をこえて 女の血が、女の嫉妬が 二人の女を灼きつくす…」

    木下恵介監督の前後編合わせて203分に及ぶ大作。
    乙羽信子&岡田茉莉子の凄まじい母娘の歴史。
    田中絹代、杉村春子ら大女優の存在感まで消してしまう二人の壮絶バトル。
    途中休憩も挟まず203分一気に観れた。
    しかしこれだけの大作なのに乙羽信子&岡田茉莉子のwikiをみるかぎり今作に関する記載がなにもない。
    特に岡田茉莉子にとっては代表作だと思うのだがエピソードの一つもない。
    あまり評価されてない作品なのか?
    自分は好き。


  • 鑑賞日 2020/03/22

    登録日 2020/03/22

    評点 75


    鑑賞方法 テレビ/有料放送/衛星劇場 


    母と娘

    奔放でわがままな母と、母のために尽くす娘の一代記。
    母親(乙羽信子)の自己を中心としたすさまじい性格は次のエピソードでもわかるだろう。
    1.夫が死ぬとすぐに庄屋の息子のところに子供朋子を置き去りにして再婚してしまう。
    2.夫をそそのかして東京に家出してしまう。
    3.朋子を呼び寄せるも、女郎屋に売り飛ばしてしまう。
    4.偶然朋子のいる置屋に女郎として売られてくるが、悪びれる風もない。
    5.朋子(岡田茉莉子)が芸者として一人前になり、東京に呼び寄せられると昔の使用人と結婚してしまう。
    などなど。
    これに対して、その都度母親は朋子を裏切るが、朋子はたった一人の母親と大事にする。母親は3度も再婚し、朋子は母親のために結婚することもできない日陰の道を歩く。
    この二人の人生を強烈に描いている。乙羽信子と岡田茉莉子の名演。また脇役で朋子の祖母として田中絹代が、朋子の置屋の姉さんとして杉村春子が出ており、どちらも個性に合った役柄ではまっている。
    前後編に別れた長い映画だが、だれることなく見られるのは木下恵介の力量か。


  • 鑑賞日 2020/02/09

    登録日 2020/02/09

    評点 84


    鑑賞方法 VOD/U-NEXT/レンタル/テレビ 


    白熱の演技合戦

     '64年制作の木下恵介監督作品で、キネマ旬報ベストテンでは3位にランクされています。原作は有吉佐和子で、続けて観てきて監督は、こういう一代記ものが好きだと知りました。

     203分の超大作で、端役として冒頭に田中絹代、中盤には加藤剛、菅原文太、山田五十鈴、杉村春子、後半では岡田英次、三木のり平など、錚々たる顔ぶれが出演しており、監督の巨匠ぶりが伺われます。

     関東大震災の特撮、終戦の様子なども、良かったと思います。

     が、何と言っても、乙羽信子と岡田茉莉子の母娘の熱演ぶりは凄かったです。乙羽の母の、あまりな勝手気ままぶり、普通に接する時はともこと呼び、甘えたい時はともちゃんとなるあたりは、流石と思いました。一方、岡田の娘は、そんな母に翻弄されながらも、気丈に生き抜く姿は美しかったです。

     この二人の60年間が描かれた訳ですが、人生百年時代の昨今ではもっとえげつないことになるんだなぁ、と思いました。


  • pp5

    鑑賞日 2000年代

    登録日 2019/04/16

    評点 75


    鑑賞方法 レンタル 


    泥濘的メロドラマ ネタバレ

    伸びやかなロケーションや実在感溢れるセットを背景に、切っても切れない母と娘の泥濘的親子関係を、メロドラマチックに紡ぎ出す名匠木下恵介のこなれた語り口に惹かれるオーソドックスな文芸映画だった。それにしても、死して尚、娘の人生を翻弄する母の禍々しい存在感に唖然呆然。

    あと、岡田茉莉子、乙羽信子の対照の妙際立つ熱演好演が心に残る。


  • 鑑賞日 2019/02/07

    登録日 2019/02/08

    評点 78


    鑑賞方法 その他/ツタヤレイクタウン店、DVDレンタル 


    有吉佐和子原作。

     前後編、3時間20分余。
     後編にもタイトルが付いている。
     木下惠介に、この原作は合ってないと思う。

     1904年(明治37年)、二百三高地陥落の年から、1964年(昭和39年)東京オリンピックの年までの、母と娘の物語。

     ヒロイン朋子の3才、母は20才の時から、ドラマは始まる。
     
     岡田茉莉子は17才から63才までを、乙羽信子は20才から70才までを演じる。
     撮影時、岡田は31才。乙羽は39才。
     さすがに岡田の17才というのは苦しい。
     二人が母娘というのは、なんとか、ごまかせても・・・。

     序盤は、芸者とか花魁とか女郎の世界で、またかと思う。
     このネタは、最近、食傷気味。

     岡田の母に対する喋りも、きつくて棘があり、見ていて楽しくない。

     この手の映画では珍しく菅原文太さんが出てる。声が渋くていい。
     岡田茉莉子と加藤剛の描写は、最後が魅せた。
     
     加藤剛の子供たちの役で、田村正和21才と、大橋巨泉夫人の浅野順子さん(当時は浅野寿々子)16才が顔を見せている。

     浅野順子さんは、当時NHKドラマでよく見た顔で、吉永小百合や内藤洋子ばりの美少女だった。
    「けんかえれじい」が懐かしい。
     1969年21才の時、35才の大橋巨泉さんと結婚して、世間をあっと言わせた。
     16才の私も「えっ! あっ! 何で!」と言った。

    岡田茉莉子さんは、1967年のNHK大河「三姉妹」で覚えた人。栗原小巻、藤村志保、山崎努の共演だった。
     
    全編の99%がセット撮影で、屋内で雨や雪を降らせて、大変だなと思う。
     ラストカットの海ぐらいは、《偽物》をやめて欲しかった。


  • 鑑賞日

    登録日 2018/05/20

    評点 70


    鑑賞方法 選択しない 


    岡田茉莉子と乙羽信子の女の性の演技に魅せられる

     有吉佐和子の同名小説が原作。
     紀州に生まれた旧家の娘の波瀾の一生を描いたもので、母との愛憎が物語の軸になる。
     香華(こうげ)とは、仏前に供える香と花のことで、芸者上りの主人公がパトロンの仏像を買い取って仏壇を設え、父、パトロン、恋人、そして母を追悼する姿の象徴。
     前篇「吾亦紅(われもこう)の章」は日露戦争の頃から始まり、関東大震災まで。
     3歳で父を亡くした朋子は母・郁代(乙羽信子)が再婚したために跡取り娘となって地主の祖母と暮らす。我儘で道楽な母は連れ子を残して、夫と東京へ。生活がままならず祖母が死ぬと一人になった朋子を静岡の遊郭に半玉として売り、朋子13歳の時、夫に捨てられて同じ遊郭に花魁としてやってくる。朋子(岡田茉莉子)は17歳で赤坂芸者となり、パトロンに伯爵を得るが、士官学校生・江崎と惚れ合い、将来の結婚を約し、伯爵の援助で芸者をやめて置屋を持ち、母を呼び寄せる。
     後篇「三椏(みつまた)の章」は震災後から始まり、戦争を経て昭和39年、朋子63歳まで。
     震災後、伯爵から与えられた築地の旅館の女将となった朋子は、伯爵の死で自由の身となるが、江崎から母が遊女をしていたこと理由に結婚できないと言われる。男なしでは生きられない母は紀州の家の昔の下男と3度目の結婚、朋子はわが身の不幸を歎く。終戦後の焼け跡から再開した旅館に母と夫が転がり込むが、忘られぬ江崎は東京裁判で絞首刑に。母が交通事故死し、遺言で父の墓を訪ねるも追い払われ、母と自分の墓のことを考えるというラスト。
     自分勝手な母を嫌悪しながらも、唯一血の繋がった母を心の支えに生きていく気丈な娘という戦前型の物語で、悲しい女の性の二人の対照を岡田茉莉子と乙羽信子が嫌らしいまでに好演する。
     それぞれに女の嫌らしさと純情を併せ持っていて、とりわけ乙羽信子のどうしようもない母が、娘同様、どこか許せてしまうという名演。
     花柳界を舞台とした女の一生ものとして物語も面白く、取り立ててテーマのようなものはないが、二人の演技に魅せられる。
     女の一生もので時間が大きく飛ぶ間の経緯説明が不足していて、ストーリーがややわかりにくいのが難。(キネ旬3位)


  • 鑑賞日 2017/06/24

    登録日 2017/06/24

    評点 80


    鑑賞方法 レンタル/埼玉県/TSUTAYA/TSUTAYA 戸田公園店/DVD 


    第一部「吾亦紅の章」と第二部「三椏の章」から成る3時間21分で描く「女の一生」

    第一部「吾亦紅の章」と第二部「三椏の章」から成る3時間21分の女の一生を描いた木下恵介監督作品。

    田中絹代、乙羽信子、岡田茉莉子の系譜を描いた戦前から戦後の大河ドラマ。
    紀州で描かれる娘(乙羽信子)の結婚式、娘との対立で気が狂った母親(田中絹代)。田中絹代は幼い孫娘と住んでいる。この孫娘が後の岡田茉莉子。

    東京に出た女性(乙羽信子)は「ハハ死ス」の電報にも動じない帰らない。
    静岡で芸者部屋に入れられた娘は頑張って三味線などしごかれる。そこに花魁としてやって来たのが母親。同様する娘。

    娘も年頃になって、岡田茉莉子が演じる。
    女将(杉村春子)から芸者の小牡丹(岡田茉莉子)は「小牡丹ちゃん、あんたは心底惚れる女だ!困るんだよ」と言われるが、実際に陸軍学校に行く兵(加藤剛)に惚れていた。
    9月1日。関東大震災。ここまでが前編。

    後編は、少尉(加藤剛)との別れ。
    岡田英二が岡田茉莉子の踊りを見ている場面が素晴らしく、踊りと共に、空襲の音が聴こえてくる。そして場面が一転して大空襲シーン。
    本当に見事な場面であった。

    「吾亦紅(われもこう)の花は、片思いの花」、三椏(みつまた)の花が咲いた、など花に縁を持たせる物語になっている。

    また、もうひとつ素晴らしいシーンがあったが、それは女将(岡田茉莉子)が廊下で倒れた直後に菩薩像を映す場面。見事。

    その後も延々と続く3時間21分の二部構成の長編大作であり、見応えあり。