東洋フラワーズのスカウト岸本は、重役から、大学選手の強打者栗田五郎をスカウトしろと命じられていた。だが栗田には、彼を大学へあげ優秀な野球選手に迄育て上げた球気一平という得体の知れぬ男がついていた。球気は岡山に妻子がいるのに東京で旅館を経営する谷口涼子と関係し、貿易会社に勤めつつも、栗田で一儲けを狙っていた。栗田を引抜くには先ず球気を落すのが必要と知った岸本は、早速、工作を開始。無口な栗田は球気には従順だった。そして涼子の旅館に出入りする中彼女の妹笛子と愛し合うようになった。栗田を二重に縛ったとホクソ笑む球気に比べ、笛子は世間にチヤホヤされ栗田の性格が変って行くのを心配し、プロ入りには反対だった。岸本が動き出すと、他の球団も策動を開始。とくに大阪ソックスの古川や阪電リリーズの島が目立った。球気は各球団を操り、栗田の値と同時に自分の報酬も上げようとの魂胆で、契約を迫られると、いつも秋のリーグ戦までと逃げていた。リーグ戦は栗田の活躍裡に終了。かつて栗田を大学へあげ得ず、誓約書を入れて球気に一身を任した高知の実家も、欲につかれて球気に絶縁状を送って来た。栗田はリーグ戦終幕と共に帰郷し、球気は岸本の条件に大体の腹を決めていた。大金を持った岸本始め、スカウト達は争って高知へ。家族と各球団のかけ引の末には兄弟の間で刃傷沙汰まで起きた。栗田は、胆石で死の床にある球気を尻目に、笛子とも縁を切り大阪ソックスに入った。球気の亡骸を前に、岸本は「今度は栗田をデッド・ボールで殺すようなピッチャーを探し出す」と、決意をこめて誓うのだった。