大晦日。高級ホテル・アバンティは新年を迎えるカウントダウンイベントを控えて賑わっていた。歌手に成る事を夢見、このホテルでベルボーイのアルバイトをしていた憲二(香取慎吾)は、夢を諦めて明日故郷へ帰ろうと決めていた。客室係のハナ(松たか子)はシングルマザーとして一人息子を育てていたが、母親としての自覚を未だ持てずにいる。息子の父親は汚職事件で世間を騒がしている国会議員・武藤田(佐藤浩市)であった。会社社長の愛人・なおみ(麻生久美子)が宿泊する客室の掃除をしていたハナは、誰も居ない隙に彼女の高級な毛皮を着て、子供を産まなければ今頃こんな毛皮を着て良い暮らしをしていたかもしれないと夢想していた。そこになおみを尋ねて来客があり、ハナは咄嗟になおみのふりをする。ホテルの副支配人である新堂(役所広司)はこの日たまたまホテルに宿泊していた元妻・由美(原田美枝子)と再会した。自分も宿泊客であり、今晩ホテルで行なわれる“ステージマン・オブ・ザ・イヤー”の表彰パーティーに招かれたのだと言ってしまう。彼はかつて芝居で身を立てる事を夢見ていたが、挫折してホテルマンに成ったのだった。今でも芝居を続けているとウソをついてしまう。カウントダウンイベントに出演予定の歌手・桜チェリー(YOU)は、所属事務所の社長に歌いたくない歌を押し付けられ、事務所の為に顧客と寝る事をも強要されていた。汚職疑惑の渦中にいる武藤田は、このホテルに身を隠している事をマスコミに嗅ぎ付けられてしまい、政治家としての進退を迫られていた。表彰パーティーが始まり、新堂は受賞者のふりをしてスピーチするが、“ステージマン”ではなく“スタッグマン”(鹿の交配技師)の表彰パーティーだった。しかも表彰されるはずだったのは由美の今の旦那であった。ホテルマンである事を恥じた事に自己嫌悪する新堂。自室で思い詰めていた武藤田は、自殺を決心して銃に手をかけたが、隣部屋から能天気な歌が聞こえて来て思いとどまる。憲二が宿泊客に頼まれて歌っていたのだった。客には才能が無いから歌なんてやめろと言われる憲二だが、武藤田には良い歌だとほめられる。なおみのふりをしていたハナは、彼女の境遇を知る。世間の眼を気にして愛する人と一緒になる事を諦めようとしている様なのだ。鉢合せになったなおみに、諦めると後悔する事になると告げたハナは、取って返してかつての恋人・武藤田の部屋を尋ね、汚名を被ってでも政治家を続けろと助言する。憲二は歌が歌えるだけ幸せじゃないかと桜チェリーを叱咤激励し、新堂はホテルマンとして武藤田をマスコミから守り切る事に成功する。カウントダウンイベントで誇らしく謡う桜チェリー。その姿を見て自らも歌を続ける事を決意する憲二。その傍らで息子に電話をかけるハナ。新堂は由美と相対し、今はホテルマンとしてがんばっている事を告げ、さっそくやって来た新年最初の客を出迎えに行くのだった。