米国人の若い人妻メアリー・フォーブス(ジェニファー・ジョーンズ)は、断ち切りがたい想いを残してローマの中央駅にやって来た。彼女は妹の家に身を寄せて、数日間ローマ見物をしたのだが、その間に1人の青年と知り合い、烈しく愛し合うようになってしまった。青年はジョヴァンニ・ドナーティ(モンゴメリー・クリフト)という米伊混血の英語教師で、彼の激しい情熱に、メアリーは米国に残してきた夫や娘のことを忘れてしまうほどだったが、やはり帰国する以外になすすべもなかった。妹に電話で荷物を持って来るよう頼み、午後7時に出発するミラノ行の列車にメアリーは席をとった。発車数分前、ジョヴァンニが駆けつけた。彼はメアリーの妹から出発のことを聞いたのだ。彼の熱心なひきとめにあって、メアリーの心は動揺した。彼女はその汽車をやりすごし、ジョヴァンニと駅のレストランへ行った。ジョヴァンニの一途な説得に、メアリーは彼のアパートへ行くことを承知したかに見えたが、丁度出会った彼女の甥のポール少年にことよせて、彼女は身をかわした。ジョヴァンニはメアリーを殴りつけて立ち去った。メアリーとポールは3等待合室に入って、次の8時半発パリ行を待つことにした。そこでメアリーは妊娠の衰弱で苦しんでいる婦人の世話をし、心の落ち着きを取り戻した。ジョヴァンニは強く後悔して、メアリーを求めて駅の中を歩きまわった。プラットホームの端に、ポールを帰して1人たたずむメアリーの姿があった。彼は夢中になって線路を横切り、彼女のそばに駆け寄ろうとした。そのとき列車が轟然と入ってきた。一瞬早くジョヴァンニは汽車の前をよぎり、メアリーを抱きしめた。2人は駅のはずれに1台切り離されている暗い客車の中に入っていった。しばらく2人だけの世界に入って別れを惜しむのも束の間、2人は公安委員に発見され、風紀上の現行犯として駅の警察に連行された。8時半の発車時刻も間近かに迫り、署長(ジーノ・チェルヴィ)の好意ある計らいで2人は釈放された。いまこそメアリーは帰国の決意を固めて列車に乗った。ジョヴァンニは車上で彼女との別れを惜しむあまり、列車が動き出したのも気づかないほどだった。慌てて列車を飛び降りた彼はホームの上に叩きつけられた。メアリーを乗せた列車は闇の中に走り去っていった。