チェチェン共和国グロズヌイ。荒涼とした大地にテントが並ぶロシア軍駐屯地。立ち込める熱気と埃の中を兵士が行き交うこの地を、ひとりのロシア人女性が訪れる。2年前に夫を亡くし、国境近くで一人暮らしをしていた80歳のアレクサンドラ(ガリーネ・ヴィシネフスカヤ)。彼女は、将校である孫のデニス(ワシーリー・シェフツォフ)に会いにきたのだった。7年ぶりに再会したデニスは、汚れた軍服を身に纏い、シャワーもろくに浴びていない様子。少し前まで息子たちを心配して訪れていた母親たちも、近頃はめったに姿を見なくなっていた。孫の将来を心配するアレクサンドラに、部隊長は“職業軍人として稼いでいるのだから心配ない”と諭す。だが、“殺すことが仕事の人間に何ができるのか”という彼女の疑問は消えない。駐屯地の外に出かけたアレクサンドラは、市場でロシア語堪能なチェチェン人女性マリカ(ライーザ・ギチャエワ)と出会うが、暑さと疲労で具合を悪くしてしまう。マリカの自宅に運ばれるものの、そこは戦闘で半壊したアパートだった。マリカは言う。“男同士は敵になるかもしれない。でも私たちは初めから姉妹よ”。長引く戦争にくたびれたマリカの隣人は、解放してほしいと訴える。駐屯地に戻ると、アレクサンドラはロシア軍が住民から嫌われていることをデニスに告げる。だが、デニスたちもそのことには気付いていた。兵士たちは疑問を感じながら任務に従事していたのだ。翌朝、任務を受けたデニスは、アレクサンドラに別れを告げて駐屯地を発つ。彼の残した帽子を手に、アレクサンドラもマリカに別れを告げに市場へ向かう。