信仰心故の悲劇

アルジェリアで実際に起こった、イスラム教過激派がキリスト教の修道僧を殺害した事件をモチーフにした実話ベースの話。
カンヌ国際映画祭パルムドール賞を受賞したらしく、社会派作品好きのカンヌ向きの作品と言えよう。

本作を最後まで観ると、宗教の良い面と悪い面が両方見えてくる。
加害者側のイスラム教過激派は、宗教の解釈を勘違いしてるので論ずるに値しない。愚かな輩たちだと思う。
被害者側のキリスト教の修道僧があまりにも気の毒であった。
常識的には、まず自分の身を守ることを最優先すべきであった。隣人を愛せよという神の教えに忠実であるが故に起こった悲劇。
鑑賞中に何度居たたまれなくなったことか…。
修道僧たちの信仰が自分自身を死に追いやったとも言えるであろう。

本作の映画としての魅力は何と言っても、映像美であろう。修道院での厳か雰囲気、美しく広がる田園風景などは目が奪われる。
編集も長回しの多用などで、テオ・アンゲロプロス、アンドレイ・タルコフスキーのかつての巨匠のように、目が離せない重厚感が前面に出ていた。

良い映画とは思うが、ストーリーは若干単調で淡々としすぎたことが気掛かり。アクセントがなかったですね…。
とは言え、世界でこのような悲劇があったことを知るだけでも収穫であった。