1945年8月8日の長崎で、一組の結婚式が行われようとしていた。花嫁は看護婦のヤエ、花婿は工員の中川庄治だった。戦時下ゆえいつ空襲になるかわからないこともあり、つつましやかに執り行われた。写真を撮り終えたところでヤエの姉で臨月のツル子が陣痛を訴えたため、披露宴はお開きとなった。帰り道、ヤエの同僚の亜矢は、恋人の高谷藤雄は呉へ行ったきり音沙汰がなく悩んでいると、同僚の春子に打ち明ける。亜矢は妊娠三ヶ月だった。ツル子の家には産婆がやってきて、「産まれるのは夜になるだろう」と言った。母・ツイはツル子に取っておきの小豆をお手玉から取り出して煮て食べさせてやった。ヤエの妹・昭子は恋人の長崎医大生・英雄と会っていた。英雄は赤紙が来たことを告げ、駆けおちをすすめたが、昭子は「それでも男ね」と突っぱねた。石原継夫の勤務する捕虜収容所でイギリス兵が病死した。継夫は捕虜といえ見殺しにした軍に怒りを感じていた。そしてその夜、やりきれなさから継夫は娼婦を抱いた。庄治とヤエは初夜を迎え、ツル子は男児を出産した。誰もが明日に向かって精いっぱい生きていた。 翌日、それぞれがいつもと変わらない朝を迎えていた。一機の飛行機の音に、明子はふと空を見上げる。8月9日午前11時2分、長崎に原子爆弾が投下された。