元陸軍中将岡部は、その子ちか子、憲治と三人で義弟西野の家に居候している。保安隊にいる知人の黒住から、彼は元副官寺位がマヌス島の戦犯から帰ったことを聞く。寺位は上官三島の身代りに戦犯となったのだが、その恨みを晴らそうと企てていると聞き岡部は落ちぶれた三島を訪ねる。この噂はデマだったが、寺位は再軍備促進団体あけぼの会を作り岡部を会長にする。憲治はアルバイトに落語家をしていたが、久美子の結婚式の夜、お妾稼業の浅子に誘惑される。岡部は南方で旧知の島村よねが金貸しをしているのを聞き、故郷の山林を低当に三百万円を借りて運動の資金とした。この運動は順調に進み、岡部は昔の暴君ぶりを発揮する。そんな父をちか子は心配していたが、父が寺位との結婚を押しつけようとするので、愛する宗行の許へ家出しようと決心する。憲治は父の勲章を持出して浅子に与えてしまう。しかも岡部の夢は一朝にして破れた。寺位がやっていた密輸がバレて新聞に書きたてられ、再軍備運動の計画も目茶目茶になった。よねを訪ねると、かつては体まで許した彼女さえ冷たい態度であしらった上、憲治と浅子の仲を聞き、行って見ると勲章は犬の首にぶら下っている有様だった。ちか子は手紙を残して家出し、すべてを失った岡部は憲治をつれて、今は自分のものでなくなった故郷の山に行き、勲章を過去の遺物と嘲ける憲治を射殺し、自らも死地を求めて林の中に消えて行った。