田植を祝う村祭の鎮守の境内。魚問屋に働く定子、いね子、かず子、たみ子らは祭り気分に浸っていたが、この村の若者達の夜遊びは対岸の村へ押しかけ娘らを冷かすこと位であった。農事に手のすいた次男坊である田村次男も、自衛隊帰りのリーダー格仙吉らと対岸を襲うが、うす暗い農家で黙々と仕事にいそしむ千代の清純な姿に、何か淡い感情が湧くのを感じる。次男は、うめ、よしの等兄妹の冷たさに耐えかね、魚にかけては玄人の作造と友乗りではえ繩を張るが、繩に掛った大鰻のことから千代の母よねと争論まで起す。仕事もなくブラブラしていた仙吉も親方に船の提供を願った上、次男と組んで帆曳きを始めた。仙吉の妹定子は次男に少からぬ好意を寄せていた。無鉄砲な仙吉は千代らの境界線を越えて帆曳で獲りまくり、そのため荒された漁場では杭代を割当てて遂に逆杭を打つ。やがて秋祭り。酒の勢いで次男に近寄った定子は相手にされず悲しみにくれる。ある夜、よねは禁止されたさし網をやっている最中、監視船にみつかり没収されてしまう。よねは見逃しを必死に願ったが規則を犯した罪は如何ともなし難い。だが一方、越境した船団も逆杭に引っ掛り仙吉は死亡、次男も危い処を千代に救われ以後、二人の心は全く解け合う。その頃、地主の松之助はさし網事件から貸地を取上げようと病身の竹造に迫り、よねには一万円あればと誠しやかに持かける。よねはそれを信用し、千代を通じ何とか次男の金を借りようとしたが、慕情を抱く千代には云い出せる筈もなく気まずい親子喧嘩となってしまった。これを知った次男は一万円を善助に渡して立去る。雨の日、警察へ出向いたよねは罪の恐しさから遂に入れず、薄暮の湖岸で、生命を断つ。晩秋の空に豊年太鼓の流れる頃、母親共々よねの棺を見送る次男は、千代と暫しの間、熱い視線をからませていた。