ある日、1通の招待状が届く。そこには、昭和25年から京都で営業されてきた映画館「オリヲン座」が閉館となり、その最終興行が行われる旨が記され、往年の入場券も同封されていた。それを手にした三好良枝(樋口可南子)は、夫の祐次(田口トモロヲ)と再会する。幼なじみで、オリヲン座を遊び場のように過ごしていた二人は結婚して東京で暮らしていたが、長い別居生活を送っていた。ひさしぶりにオリヲン座を訪ねてみたいと口にする良枝だが、祐次の返事は色よいものではなかった。…昭和32年の夏、京都。豊田松蔵(宇崎竜童)とトヨ(宮沢りえ)の夫婦二人で、オリヲン座は経営されていた。そこに、故郷の大津から出てきたばかりで仕事を探していた千波留吉(加瀬亮)が現れる。活動写真が大好きなので、ぜひオリヲン座で働かせて欲しいと懇願する留吉。その熱情にほだされて、松蔵は彼を雇うことにした。自転車でのフィルム缶の運搬から、留吉の仕事は始まった。やがて、映写係も任されるようになり、まるで親子のような松蔵と留吉の関係に、目を細めながらトヨは見守る。そんな幸福な日々も長くは続かなかった。松蔵は、若くしてこの世を去ってしまう。オリヲン座の閉館を決意するトヨだが、留吉の励ましによって営業を続けることを決意する。二代目の館主は、留吉だった。だが、映画界には斜陽の波が押し寄せていた。テレビが普及し、オリヲン座を訪れる観客の数は減るばかり。そして、留吉とトヨの仲を邪推して、心無い噂をまき散らす人々もいた。そんな苦境の時期、留吉とトヨの心を和ませてくれたのが、幼い日の祐次と良枝だった…。それから数十年。死を目前にしたトヨ(中原ひとみ)の最後のひとときを、閉館するオリヲン座で過ごさせよう病院から運びこむ留吉(原田芳雄)。その劇場内には、成長した祐次と良枝の姿もあった。