1961年に出版された『アメリカ大都市の死と生』は、近代都市計画への痛烈な批判とまったく新しい都市論を展開、世界に大きな衝撃を与えた。今や都市論のバイブルとなっているこの本の著者は、ニューヨークのダウンタウンに住む主婦ジェイン・ジェイコブズ。建築においては一介の素人に過ぎなかった彼女の武器は、その天才的な洞察力と行動力であった。当時の主流は、アメリカン・モダニズムを背景にしたゾーニングと自動車中心の都市計画。しかし、一見合理的に作られたはずの街が次々と活力を失い、未来の廃墟となっていく姿を目の当たりにしたジェイコブズは、そこで暮らす者の視点で観察し、多様で文化的でいきいきとした魅力的な街を作るための独創的なアイディアを練りあげる。そんな彼女に対するのは“マスタービルダー”の異名を持つNY都市開発の帝王ロバート・モーゼス。彼が強引に推し進める開発プロジェクトを阻止するため、ジェイコブズとその仲間たちは立ち上がる。ワシントン・スクエア公園で、グリニッジ・ビレッジで、そしてローワーマンハッタン高速道路の建設をめぐり、壮絶な闘いを繰り広げていく……。