1950年代半ば、マンハッタンのロフトに連日連夜、気鋭のジャズ・ミュージシャンたちが集まり、セッションが繰り広げられていた。ここに住んでいた写真家ユージーン・スミスがその模様を録音し、写真に収めた素材を元に構成したのが本作。花屋の問屋街に位置する5階建ての薄暗いロフトに集まったのは、既に絶頂期を迎えていたセロニアス・モンクや作曲家・ピアニストとして名を馳せる前のカーラ・ブレイ、さらにはズート・シムズ、ホール・オーバートン、ロニー・フリーといった名うてのミュージシャンたちも加わっていた。彼らの一挙一動を逃すまいと、部屋中に録音用の配線を張り巡らせ、何千枚もの写真を撮るスミス。このユニークなコラボは8年間にも及んだ。単なる記録の域を超えて浮き彫りになるのは、ジャズ・ミュージシャンたちの圧倒的な存在感や刹那的な生き様、そして彼らとの交流を通して、人生の岐路に立たされていた1人の写真家が抱く新たな決意。また、歴史的な報道写真の数々を生み出してきた暗室での孤独な作業に加え、ユーモアと気難しさを併せ持つスミスの複雑なパーソナリティも、多くの証言者によって明かされる。さらには、後にタウンホールでの名演として結実するモンクとオーバートンのリハーサルや打ち合わせ風景など、今まで公にならなかった貴重なやりとりにも注目。まさに今その場で起こる奇跡に立ち会っているかのような臨場感を堪能できる。