紀行作家のブルース・チャトウィンが先史時代や人類史に関心を抱いたきっかけは、幼少の頃に祖母の家で見たブロントサウルスの毛皮だった。美術品の蒐集家や考古学の研究生、ジャーナリストと、様々なフィールドで非凡な才能を発揮したチャトウィンが最終的に選んだのは、自らの足で旅をしながら小説を書く人生だった。南米を旅して、デビュー作『パタゴニア』を書きあげたチャトウィン。そしてアボリジニの神話に魅せられ、中央オーストラリアを旅していった。しかしHIVに感染。当時、エイズは不治の病だった。死を悟ったチャトウィンは、死に近づいたアボリジニが生を受けた地に帰還するように、自らの死に方を探りながら『ソングライン』を書きあげた。本作では生前チャトウィンと親交を結んだヴェルナー・ヘルツォーク監督が、パタゴニアや中央オーストラリアのアボリジニの地などチャトウィンが歩いた道を自らも辿り、チャトウィンが魅了されたノマディズム(放浪)について探究する旅に出る。