1966年春。作家・長内みはる(寺島しのぶ)は、徳島の講演会で気鋭の小説家・白木篤郎(豊川悦司)と出会う。これをきっかけに、共に妻子やパートナーがありながらも、男女の関係になる2人。クリスマスの夜でさえ、身重の妻・笙子(広末涼子)と長女・海里を置いて、みはると過ごす篤郎。それでも、笙子は篤郎がノートに殴り書きする原稿を清書する自分の役目を守っていた。そればかりか、実は篤郎名義の短編のいくつかは笙子がひとりで書いたものだった。だが、夫から執筆を勧められても、“あなたの名前で出してちょうだい”と返すばかりの笙子。やがて関係が長くなると、篤郎は他の女たちの気配をみはるに隠さなくなる。京都で役者の青年(佐野岳)と行きずりの一夜を過ごしてみたものの、みはるの心は晴れない。出会った頃のような情熱は、みはるからも篤郎からも失われかけていた。そんなある日、篤郎はみはるを連れて少年期を過ごした長崎・崎戸に近い廃坑の島を巡る。“ここに連れてきたのは、嫁さんのほかにあんたがはじめてだよ”と言われ、“出家しようと思ってるの”と告げるみはる。男と女でいられる最後の夜。ふたりは一緒に風呂に入り、篤郎は慈しむようにみはるの髪を洗う。風呂上がりに、“あなたがまず切って”と請われた篤郎は、誰よりも先にみはるの長い髪を切る。1973年11月、得度式。みはるは出家する。髪の毛を剃り上げ、“寂光”となったみはるに、篤郎は自分をここによこしたのは妻だと明かす。寂光の心の中に湧き起こる笙子への共感。一方、笙子は夫の帰宅前、ある決意を胸に秘め、建築会社を経営する篤郎の友人・秦(村上淳)を訪ねていた。数年後、白木家の新居で笙子の手料理を囲んで夫妻や娘ふたりと団欒した寂光は帰り際、笙子に“ありがとうございました”と伝える。穏やかな決着を迎えたように見えた彼らの物語。だが、その最終章は18年後に訪れる……。