【ジャンルを問わず職人的な活躍を見せる娯楽映画のホープ】茨城県生まれ。成城大学で映画研究部に所属し、在学中の1993年に監督した8ミリ短編「五月雨厨房」がPFFアワード93で優秀作品賞を受賞する。卒業後、崔洋一、伊丹十三、平山秀幸などの下で助監督としてキャリアを積む。その一方で鈴木謙一と共同で脚本家としても活動し、中田秀夫監督「仄暗い水の底から」(02)、金子修介監督「恋に歌えば♪」(02)、崔洋一監督「クイール」(04)などの脚本を担当した。監督作でも自ら脚本を手がけることが多く、鈴木とのコンビは断続的ながら継続している。また、鈴木たちと結成した映像コントユニット“小鳩の会”での作品発表や、ホラービデオ『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズで構成やナレーションを長年担当するなど、幅広い活動を続けている。劇場映画監督デビューは99年の自主製作による16ミリ中編「ローカルニュース」。その後、オムニバスやビデオ作品でキャリアを重ね、2005年には「あそこの席」「@ベイビーメール」「絶対恐怖・ブース」のホラー3本が連続公開。続く多部未華子主演のファンタジー「ルート225」(06)で注目され、伊坂幸太郎の小説の映画化作品「アヒルと鴨のコインロッカー」(07)を手がけると、これが原作ファン、映画ファン双方から高い評価を受けるとともに興行的にも大成功を収めた。これで第一線に踊り出た中村は、ベストセラー小説を次々と映画化。08年には海堂尊原作の医療ミステリー「チーム・バチスタの栄光」、芥川賞作家・長嶋有の「ジャージの二人」を立て続けに監督する。その後、完成作品が原作者から好評を得たことで他の作品の映画化も任されるようになり、伊坂原作では「フィッシュストーリー」(09)、「ゴールデンスランバー」(10)、海堂原作では「ジェネラル・ルージュの凱旋」(09)と、順調に作品を発表し続けている。「ちょんまげぷりん」が10年夏公開された。【ベストセラー小説を巧みに映画化】いわゆる邦画バブルを背景とした小品群で実績を重ね第一線に躍り出た、現代日本映画界においては貴重な職人派。脚本家、助監督としても数多くの経験を積み重ねてきただけあって、娯楽作品を中心にジャンルを問わず安定した力を発揮する。ここ数年は年2本以上という早いペースながら一定のクオリティを保ち、手堅い仕事を見せた。そこではおよそ日常の地平を出発点として癖のあるドラマに展開していく。近作の特徴である小説の映画化に関しても、原作そのままではなく映画として再構成した上でトリッキーな原作の持ち味を引き立てるなど、作家としての実力も高評価された。その反面、原作の知名度に隠れ、中村自身の名前が今ひとつ一般に浸透していないのが現状。主だった映画賞での受賞経験もないが、全国公開規模作における第一線での活躍はコンスタントに続く。