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鑑賞日 2012/05/17  登録日 2025/03/29  評点 70点 

鑑賞方法 選択しない 
3D/字幕 -/-
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将軍の座と甲賀流首領を賭けた死闘

 1963年公開の「江戸忍法帖 七つの影」であります。「月影忍法帖 二十一の眼」と同じく山田風太郎原作、倉田準二監督作品。脚本は鈴木兵吾と高田宏治、音楽は鏑木創。白黒シネマスコープ、85分。

 犬公方将軍・綱吉の治世。柳沢吉保(柳永二郎)は、愛妾を将軍家に献上、生れた子をお世継ぎにして権力を握らんと目論みます。しかし邪魔な存在が一人。前将軍家綱の御落胤で、今では庶民の長屋に住む浪人・足柄悠太郎(里見浩太郎)であります。実母の計らいで織部玄左衛門(北龍二)の元で育てられました。柳沢は服部玄斎(瀬川路三郎)を首領とする甲賀七人衆に、悠太郎と織部親子の殺害を命じます。

 甲賀七人衆は織部親子三人に加へ、幼い丹吉(竹内満)まで殺してしまふ。怒りに燃える悠太郎。丹吉の姉・お縫(新井茂子)は復讐を誓ひます。悠太郎は吉保邸に乗り込みますが、七人衆に囲まれ追詰められます。彼を助けたのは吉保の娘・鮎姫(北条きく子)。彼女は父の蛮行を恥ぢ、同時に悠太郎に好意を抱いて助けたのです。そのまま悠太郎の家に住みつく鮎姫に対し、お縫は鮎姫に変装して甲賀屋敷に忍び込みます。留守番の民部(加賀邦男)を、油断に乗じて弟の仇を討つお縫。

 その甲賀屋敷では、首領玄斎が息子小源太(松方弘樹)に諭され吉保の言ひなりになつた事を後悔し、それを聞いた七人衆に吊るし上げられ、小源太も牢に閉ぢ込められます。自力で脱出した小源太の前に現れたのは、お縫。彼女から事情を聞いた小源太は忍者たちの凶行を詫び、自分を好きにしてくれと潔い態度を示します。この小源太に打たれたお縫は以後彼に魅かれるやうに。父を殺された小源太は、完全に甲賀忍者たちの敵となり、悠太郎に協力して戦ふ事になるのでした......

 これも集団抗争時代劇の流れを汲む一作で、当時の若手スタア里見浩太郎と松方弘樹が主演、大スタアは皆無で基本的にバイプレイヤーで配役されてゐます。
 タイトルの「七つの影」は、敵方の甲賀七人衆のこと。カシラの瀬川路三郎とその息子松方弘樹に反旗を翻し暴走します。リーダー格の石黒達也、幻術で松方をも操る江幡高志、紅一点の楠侑子、子供を殺して非難囂々の吉田義夫、素人娘に殺される加賀邦男、忍術よりも馬鹿力の印象が強い滝恵一と阿波地大輔......一応夫々にキャラが立つてゐます。彼らの上に立つのが、お馴染み柳沢吉保の柳永二郎。安定の役柄。

 ヒロインは北条きく子と新井茂子。北条は吉保の娘乍ら、父の凶行に心を痛め屋敷を出て里見浩太郎の元へ。新井も里見に好意を寄せてゐたのは明らかなのに、積極的に里見の世話を焼きます。唖然とする新井の表情が印象的。当然七人衆からも敵視され、あゝ、非業の最期を遂げます。

 新井茂子は幼い弟を殺され甲賀七人衆に復讐心を抱き、自ら鮎姫に化けて潜入、油断した加賀邦男を殺してしまふのは恐れ入つた。当初松方を七人衆の一味と思ひ襲ひますが、松方が謝罪し大人しく新井に断罪されやうとする態度に打たれ、好意を抱くのです。ラストでは首領を継いだ松方と結ばれる事が暗示され、二人のヒロインに明暗が示されました。因みに新井茂子は此の後「ウルトラセブン」でガッツ星人に狙はれます。夫君は「キャプテンウルトラ」の中田博久。

 山田風太郎なのでリアルさよりも忍術・幻術の面白さを優先させた荒唐無稽な物語。いはば「心のある集団時代劇」とでも申せませうか。手練れの筈の七人衆が案外鈍感だつたり間抜けさを見せたりして、色色変な所があるものの、倉田準二監督らしく全体の纏まりは端正な作りとなつてゐて愉しめるのでした。