「西脇金融社長射殺!犯人は自動車で逃走、食堂勤めの少女が目撃」--新聞が大きく報道したこの事件が迷宮に入ろうとするころ。小松竜太は、親分の横光に弟・峰夫が歌手としてジャズ喫茶に出演しているのを止めさせると命じられた。竜太は暴力で飯を食う横光組の幹部で、弟の峰夫もその一員だったが、堅気の娘・陽子を恋してからは足を洗って歌手として身を立てようと考えるに至った。しかし、西脇社長殺しが横光組の仕業であり、その手先となって働いた峰夫が人目に立つことは許されなかったのだ。竜太は峰夫に歌手をやめるよう頼んだが峰夫の決心は固かった。かねてから竜太に対抗意識を燃やしていた同じ幹部の黒崎は、横光にたきつけて竜太を蹴落そうとし自ら峰夫の消し役を買って出た。黒崎は峰夫をいつもの殺し場、樫村自動車修理工場に誘い出すが、峰夫は難を逃れた。工場の主・樫村は、横光に金を融通してもらったばかりに常に利用されていた。一方、竜太は再び峰夫に歌手を断念するよう頼んだが峰夫の心は変らない。竜太にも、かつては愛人があり、その女が残した子供の真一は小児マヒで愛光園に入院しているだけに弟の気持がよく分った。彼は大幹部の須藤に、いざという場合は弟を救ってくれるよう頼んだ。やがて峰夫は歌っているうちに西脇事件の目撃者・かな子に発見された。これを知った黒崎は、まず、かな子を殺し、再び峰夫を狙い出じた。警察も峰夫に星をつけた。竜太は峰夫を連れ出し、陽子と一緒に逃した。危険は竜太の上に回ってきた。黒崎は真一を愛光園から誘拐、子供をたてに峰夫の連れ出しを迫った。竜太は止むなく従った。峰夫の殺し場は樫村の自動車工場と決った。竜太は頼みの綱を須藤にかけたが、彼は前に襲った外国人の仕返しに倒れたと横光の情婦リエが知らせにきた。竜太は峰夫をかばって黒崎と対峙した。しかし絶望である。このとき横光の配下の五郎が竜太のために寝返りをうち、これをきっかけに工場は修羅場と化した。竜太はいよいよ窮地へ。そこへ樫村が、今までの怒りを一身にこめ、電気ドリル片手に横光らに約した。ひるんだすきに彼は一一〇番へ電話した。驚いた横光と黒崎は自動車で逃走するうち非常警戒を突破して暴走、自ら墓穴を掘った。だが竜太も黒崎の弾丸に当り息を引取っていた。峰夫と陽子は真一を連れ愛光園へ行き、竜太の霊を慰めることになった。