売れない役者の村田(佐藤浩市)がマネージャー長谷川(小日向文世)とやってきたのは、港町・守加護だった。彼は、映画監督の備後(妻夫木聡)から映画の主演を依頼されたのだ。…しかし、備後の真の職業はクラブの支配人であった。街のボスである天塩(西田敏行)の愛人マリ(深津絵里)に手を出したことが発覚した備後は、伝説の殺し屋“デラ富樫”を5日以内に連れてくることを要求される。それが、命を救われる唯一の道だった。そこで備後は、“デラ富樫”のニセ者として村田を呼び寄せたのだ。騙されているとも知らず、初めて主役の座を得た村田は大いに張り切って、台本がないことを不審がる長谷川を尻目に、“デラ富樫”の役作りを深めていく。天塩と初対面の席でも、そのオーバーアクトに拍車がかかり、備後は気が気でない。幸運な偶然が重なって、天塩の部下である黒川(寺島進)の目も欺くことに成功する。天塩が“デラ富樫”を探していたのには理由があった。天塩商会と対立する江洞(香川照之)から狙われの身の天塩は、“デラ富樫”を自分の配下におこうと企んだのだ。きわどい備後の目論みに業を煮やしたマリは、早く街から逃れようと誘う。やがて計画は崩壊し、ようやく村田も映画の撮影ではないことに気がつく。そのとき、自分の身を犠牲にして備後と村田を救ったのはマリだった。すべてを悟った村田は、映画仲間たちを守加護に呼んで、天塩を騙すための大芝居を仕掛ける。だが、その過程で天塩とマリは真実の愛に目覚めて、二人で街を去っていく。呆然とする備後と村田の前に現れたのは、本物のデラ富樫だった。映画仲間たちのトリックで、デラ富樫をペテンにかける村田。それは彼にとって一世一代の名芝居であり、見切りをつけようとしてした役者稼業を思いとどまらせるのに充分なものだった。ひとつのドラマが終わり、また次の映画が始まるように……。