高次脳機能障害は交通事故、火災・労災などによる脳へのダメージよっておこる後遺症障害で、全国に60~70万人いると言われている。原因は外部からの何らかの衝撃や一酸化炭素中毒などによる後遺症だとは明らかになっているが、その現れ方は人それぞれ。最近は、新型コロナによる後遺症にも、同様の症状が現れると言われている。外見は健常者とあまり変わらないのにイライラや意欲減退などに襲われるのがこの障害の特徴で、周囲から理解を得られにくいために解雇など様々な深刻な問題が派生する。高次脳機能障害が社会的に大きな注目を浴び始めたのは、三井三池闘争から3年後の1963年、三池炭鉱三川坑で発生した事故で800人を超える一酸化炭素中毒が続出したことだった。いわゆるCO患者と言われた人々で、今もこの問題をめぐって現地・大牟田などで様々な闘いが展開されている。高次脳機能障害は他人事のように思われがちだが、実は脳血栓や事故など、身近におこりうるものである。本作では、この問題に早くから取り組んでいる山口研一郎医師の奮闘を中心に、高次脳機能障害に向き合う患者や介護に担い手である家族の現状を紹介していく。そして、1960年の三井三池闘争を一つの結節点とする現代社会の有り様と、この障害の問題を考える。