都市で昇降する気分と性的興奮

猿の目は時折，涙でうるんでいるようにも見える．また口元ではニヤつきが表現され，不気味でもある．この無垢な怪物的印象とそこにあるらしき感情が，主要な人物たちによって翻訳され，届けられようとしている．結果としての悲劇よりも，過程として見える皮肉やエロスが物語の裏側に迸ってもいる．
スラバヤという地域が示される．香港で作る映画，そして見たくない映画などと，女優志望のドワン（ジェシカ・ラング）は，まず映画の現状に批評的な視点として現れる．やや大きな探索船に小さなボートで難破してきた者という登場も象徴的でもある．冒険好きで，野生にも同情を示し，ちゃっかりカメラマンになっているジャック（ジェフ・ブリッジス）が，彼女に近づいていく．しかし，拝金主義を体現したような，そして金に関しては気骨のあるウィルソン（チャールズ・グローディン）に引きずられるようにして，一行は霧中の謎の島に近づき，その核心にある猿に迫る．
島の住民たちの砦がある．木や草で作られていて，100人以上はその中に屯している．門には大きな閂が掛けられている．この島の資源である石油がその閂に塗られており，そのピストン運動はエロい趣向とも言える．人間は猿にとって丁度手のひらサイズで，一口で食べれるか食べられないぐらいの大きさではある．ドワンは泥に汚れると猿に滝を浴びせられ，滝壺に潜らされ，まずは清浄にされる．それは，汚れた水とも見え，目下探索されつつある石油とも対比される．巨大な蛇が突然現れる．猿と蛇が絡み合いながら，蛇は千切れてしまう．夜景に揺らぐ島民たちの灯も印象的であるが，大都市の夜空に上がる花火が島の印象に接続される．
スターになろうとしているドワンも，彼女がそうなることを大して望まないジャックとの間で揺れている．黄色い服を着てるかと思えば，白いドレスを纏ったドワンがいる．彼女の性的な魅力が猿をニューヨークへ導いているとも感じられる．茶番が始まる．そして茶番は都市的な拡大を見せる．地下鉄と橋とがこの都市の交通の動脈となっているが，コングによって線路は破壊され，橋梁も都市の管理者によって自ら封鎖される．どこかで見たこの光景として，都市の高層ビルと島のそそり立った岩が満月を焦点として重なり合う．送電線などインフラも壊され，猿は登り，墜落していく．