17歳の高校生・聡夏の春休みは、初めての失恋と母・志津枝の突然の入院で始まった。父・泰仁とのギクシャクしたふたり暮らし、思わしくない母の病状に、動揺する聡夏。そんなある日、病床の母の頼みで彼女が大切にしていた古いオルゴールを探し出した聡夏は、その中から投函されていない一通の手紙と一枚の写真を見つける。手紙は24年前に母が藤木真一路という父ではない誰かに認めたラヴレターで、色褪せた写真には若い頃の志津枝と藤木と思われる男性が写っていた。「私たちはこのまま終わりになってしまうのでしょうか?あの願い桜の下でもう一度会ってください…、桜が咲いたらもう一度」切ない母の想いが綴られた文面。それを読んだ瞬間、聡夏は母に内緒で藤木を探し、24年前の母の願いを叶えてあげることを決意する。手紙に書かれてあった母の故郷である長野県上伊那郡を訪ね、やがて東京に暮らす藤木を捜し当てる聡夏。ところが、その男は結婚生活の失敗で負った心の傷を乗り越えられずにいるうらぶれた中年になっていたのだ。これでは母をがっかりさせてしまう。そう思った聡夏は、藤木の改造を開始。同時に、願い桜の満開の夜、ふたりを再会させる準備を整える。しかし、藤木は一足先に病床の志津枝を見舞ってしまう。25年振りに再会を果たすふたり。そしてその後、藤木は別れた妻の暮らす北海道へ旅立った。夜、そんなこととは知らない聡夏は、母を連れて病院を抜け、願い桜に花見に出かける。だが、そこへ現れたのは藤木ではなく父であった。戸惑う聡夏。しかし、母はそんな娘に幸せそうな顔を見せるのだった。そして、それが彼らの最後の家族旅行となった。