夜の盛り場で、悪どく稼ぐやくざや暴力団。その中にも昔かたぎに義理と人情で仁侠道を押通す立花組組長立花茂三郎の縄張りがあった。滝村周次は、そんな立花にひろわれて育てられ成長した。やがて周次の弟、洋が中学を卒業し集団就職で上京してきたが、その二人だけの祝いの席に、周次の舎弟分・淳がとびこんできて、縄張内のクラブで坂下の弟次郎があばれていることを知らせた。昔仲間の弟ということで、周次がその場をとりはからったが、律義な山下は、立花の伯父貴、侠友連盟の阿部をたててまるく納めた。しかし、次郎はその晩立花を襲い、立花を救おうとした周次は次郎を刺した。自首した周次は、長い刑務所暮しの中で立花が何者かによって殺され、その報復に坂下が惨殺され、坂下組が壊滅したこと、そして立花組も壊滅状態に近いことをホゾを噛む思いで聞いた。四年たった。仮出獄で出た周次に、街は冷たかったが、後に残った立花の娘ゆき、大川、淳の三人はよろこんで迎えてくれた。組長を守るためとはいいながら、自分のために組が侠友連盟にゆだねられ、かつての組の連中は阿部になびいてしまい、阿部は立花がきらった売春や麻薬で悪らつに組織を拡げていることに怒った周次は立花組再建のために立ち上った。そんな周次を消すために、阿部はかつて立花を暗殺した時と同様、殺し屋白土を周次に指向ける一方、大川にも立花組とゆきをエサに周次暗殺を命じた。しかし、いずれも失敗したことを知ると、兄が前科者ということで会社をやめ、麻薬のバイ人にまでなり下った洋を人質に、周次をさそい出しにかかった。立花を殺し、昔仲間の坂下まで殺して縄張りを乗っ取った犯人が阿部だと知った周次はその呼び出しに応じた。ゆきは、自ら傷を負いながら、自分の父の恩のために命を捨てようとしている周次に激しい慕情をよせた。白々とした夜明けの朝、冷たい雨の中を独り、決闘にいそぐ周次の心は燃え、その手は、義理と恩の重さを痛いほど感じてドスをしっかり握っていた。