ある日、町奉行所・内部で、見習い与力・安田小兵衛が町奉行・長尾監物に切りかかった。与力・同心たらは薄情にも我さきに逃げてしまい、監物は逃げ遅れた主水を盾にするが、主水がよけてしまったため小兵衛に刺し貫かれてしまう。この事件の不手際により、主水は向う半年の御扶持半額をお取り上げにされた。後任の奉行には、若い女かと見まちがう美男、奥田右京亮が着任した。おけら長屋の居酒屋「おふく」でヤケ酒を飲む主水が、店の外の騒ぎに表へ出ると、京劇の仮面のように顔をくま取った旗本愚連隊が暴れまわっていた。キラッと光る物が主水の視界をかすめた途端、愚連隊のひとりが乗っていた馬が暴走し、あとに首の骨が折れた狼人、弥兵衛の死体が転っていた。この暴走に疑問を持った主水は、馬の後脚に十字手裏剣が突きささっているのを発見する。ある夜、仕事人たちの会合が開かれた。元締の弁天から“旗本愚連隊の首領格三人の仕事料、六両”が提示される。安すぎる仕事料に帰ってゆく仕事人たち。依頼主は弥兵衛の娘、お弓だった。結局、主水と独楽売り、わらべや文七がそれを受け、早いもの勝ちの勝負となった。ひとり目の的を文七に先取りされ、秀たちにからかわれた主水は、右京亮の素性を調べてほしいと彼らに依頼した。数日が過ぎ、右京亮があの若さで町奉行になれたのは、老中酒井雅楽頭のヒキで、寺小姓から六番組、御旗奉行、町奉行とトントン拍子に出世双六を登りつめたことがわかった。そんな折、主水は円光院で大奥年寄・松尾、老中酒井、右京亮が密会する現場を目撃した。そこでお上が、昔ここで慰みものにした菊という女の怨霊に悩まされていると知る。また、旗本がおけら長屋に乗り込んだ。主水が駆けつけると、おふく、杉江など多数の死体が横たわっていた。これを理由に、奉行所はおけら長屋の住人を強制立ち退きさせ、旗本の首領、神保主悦らを切腹させた。お弓も自ら命を絶ち、文七は本当の下手人を殺ると宣言、十字手裏剣の使い手九蔵と対決するが、相打ちとなって息をひきとった。その頃、円光院では酒井と右京亮が酒を飲みながら密談していた。「おけら長屋に寺を建てれば菊の怨霊も鎮まるから上様も大喜び」と語る酒井に、右京亮は菊の弟だと告げる。驚いた酒井は血を吐いて倒れた。お上に仕えることになり、酒井が邪魔になった右京亮が毒を盛ったのだ。そこに、主水、秀、政、お玉、順之肋が右京亮の命を狙いに現われた。そして、主水の怒りの刃が右京亮を貫いた。